クマ坊の日記

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【組織】使命感が強すぎると、世間とズレてしまう

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前回は、山一証券の自主廃業を描いた「しんがり」というドラマを取り上げて、エンゲージメントについて考えてみました。私自身も過去、組織が暴走してしまった事件にかかわったことがあります。今日は書ける範囲でその時の話をしてみたいと思います。

 

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きっかけは仕事に対する強い使命感

山一証券は経営幹部が自分たちの出世を優先して、組織が暴走していきました。でも、不祥事を起こす日本企業の多くは、悪い奴が明確なことは少ないように感じます。私が直面したケースも、使命感が強すぎて世間とズレた行動をしてしまい炎上したケースでした。私が担当したのは一部上場企業のA社でした。A社はある事件でコンプライアンス違反を疑われました。結果的にはコンプライアンス違反はなかったのですが、A社がとった行動は世間から大きく叩かれました。何故ならA社は民間企業でしたがとても公的な色合いが強い事業に携わっていたからです。そのためコンプライアンス違反ではなかったのですが、「あのA社がそんなグレーなことするのか?」ということで世間から叩かれました。後の報告書で分かったことですが、A社の経営幹部が具体的にグレーな行動を指示したことはありませんでした。現場に近い社員が、「このままでは自分達の事業に悪影響を与える可能性が高い」「ひいてはお客様にサービスを提供できない」という危機感を感じて引き起こしてしまった事件でした。

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三者委員会の発表で感じた違和感

A社は当初、それほど世間で問題になる行為だとは認識していませんでした。(そこも問題なのですが)マスコミを賑わすようになってから「これはまずい!」と経営陣も慌てて事態の収拾を図ります。問題が大きくなった以上、コンプライアンス違反でなくても何を弁解しても世間からの疑いは消えません。とうとう第三者委員会を設置することになります。第三者委員会は、弁護士や学者を中心とした有識者によって構成されます。A社は第三者員会のヒアリングに協力的にこたえます。100ページ超に及ぶ報告書でした。私も目を通しましたが、かなり仔細に当時の状況が描かれていました。完成した報告書を元に、第三者委員会による報告会が開催されます。第三者委員会の座長を担当した弁護士からの説明は、まるでA社が悪の巣窟のような表現でした。私自身はその発表があった際は、A社の今回の事件の詳細については知り得ていませんでした。ただ、社員教育の仕事を通して、A社とは深いつきあいがあったので悪の巣窟のような表現については違和感をもったのも確かでした。私が知り合ったA社の社員は他者と比べても頗る真面目で、いい人ばかりだったからです。まあ、付き合いが深いといっても私は所詮外部の人間ですから、組織内部で見えないこともあるのだろうと認識していました。

 

使命感、責任感が強すぎるのも考えもの

三者委員会の発表があった半年後に、A社から相談に乗って欲しいとの依頼をいただいました。テーマはコンプライアンス教育です。私の専門ではないので辞退しようかと思いましがお話だけは聞くことになりました。第三者委員会の発表会見があった後にA社はまず経営幹部を対象にコンプライアンス研修を実施しました。講師は第三者委員会の座長を務めた弁護士が担当しました。しかし、結果的には研修内容はよくなかったそうです。そもそも弁護士なので人に教えるのが上手いわけでない。また発表会見での弁護士の言動で、社員から信頼感をそもそも獲得していない。「このままでは帳面消しの教育で終わってしまう。真の意味で再発防止の教育にならない」そんな危機感を抱いて私に相談を持ちかけてくれました。そこで、全体の教育設計を私が担当し、実際に指導するのは私が信頼するコンプライアンス教育の第一人者にお願いしました。その教育の最終メッセージは、「コンプライアンス違反でないからOKではない。そもそもコンプライアンスギリギリの塀の上を歩くような行為がナンセンス。迷ったら一度立ち止まって周囲に相談しよう」というようなものでした。また教育とあわせて部門間の人事ローテーション等の人事施策の変更も提案しました。再発防止という意味では後者の施策のほうが効果的だったお思います。研修をオブザーブしましたが、A社の社員はやはり真面目で他社と比べても自分の仕事に使命感を感じている人ばかりでした。でもいくら素晴らしい使命感、責任感も行き過ぎると毒になります。特に世間の感覚とこうも乖離してしまうものだということに気づかされました。

 

スタンドプレー弁護士

後日談で、座長の弁護士がA社を必要以上に叩きたかったのかは自分自身の功名のためでもあったようです💦 当時から政治家への転身が囁かれており、ここで名前を売ることで知名度をあげたいという思惑もあったようです。この2年後にある地方自治体の知事選に立候補していたのは驚きでした💦 正義を振りかざす人間が、一番自己の利益にこだわっていたのは御粗末でした。まあ、ちゃんと落選してたからいいんですけどね。