クマ坊の日記

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【人材育成】人的資本開示が難しい理由

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私の仕事である企業の人材育成の分野で、現在最もホットなテーマが人的資本開示です。すでに、企業価値の8割〜9割は無形資産で測られています。無形資産の中において、人が占める割合が大きい為この分野に注目が集まっています。でも、何事も簡単には進まない訳で💦 今日は人的資本開示が難しい理由について考えてみたいと思います。

米国証券取引委員会が人的資本開示を義務づける

株式投資をされている読書はご存知のことですが、日本企業の株式時価総額は総じて伸びていないのが実際です。2022年の株式時価総額のTOP100を見ても、アメリカ62社、中国14社、日本はトヨタの1社のみです。足元の業績もあるでしょうが、それ以上に成長力の期待できる産業が育っていないのが現実です。一方、海外の投資家が期待しているのは、持続可能性が見込まれる企業成長です。地球温暖化を筆頭に、従来のやり方では地球環境が持たないし、地球環境が悪化すれば社会や企業活動自体の継続も危ぶまれる。だから、SXを推進する企業への関心が高まるし、社外課題起点で新たなビジネススタンダードが出来上がり、そのビジネスをリードする企業はより成長も財務的な成功も収めるだろうと考えでいます。正解に言うと投資家の動機は、SXで一儲けしようと考える人も、社外的インパクトを重視している人など様々ですが、投資対象としてはSXを推進する企業は魅力的に映ります。ただSXは海のものとも山のものとも分かりません。そこで求められるのが、無形資産とりわけ人的資本開示になります。米国の証券取引委員会(SEC)が上場企業に開示を義務づけたのも、大きな影響を与えました。

 

日本企業がざわつく

海外のこのようなトレンドに対して、日本企業はざわつき出しています。「人材育成は昔からうちやってる!」「世界に向けて堂々と発信できる」「人的資本開示に取り組めば、海外からの投資をより呼び込める。もしくはやらないと、資金を引き揚げられてしまう」人的資本開示の中身もよく分からないまま、総論賛成で盛り上がっているのが日本企業の現状です。企業だけでなく、国も経済産業省が音頭をとって推進しています。

 

人的資本開示が難しい理由

しかし、人的資本開示を行うには技術的な課題が存在します。そもそも人的資本開示は欧米から逆輸入された考え方です。欧米の企業は人事制度もジョブ型が基本です。日本はまだまだメンバーシップ型が多いです。労働慣行が大きく異なるという課題があります。投資家が人的資本の価値を測定する際に共通の物差しが必要です。その有力な物差しとして、ISO30414の規格が注目を浴びています。この規格は欧米生まれなので、欧米企業の雇用慣行に沿って作られています。日本企業とは相入れない点があるわけです💦 二点目にそもそも人的資本を測る仕組みが社内に整備されていない課題もあります。例えば、企業の業績に重大な影響を与えるポストを明確にすることが求められます。でも、日本企業はポストではなく、人を重視しているので回答できないことも出てきそうです。後継者計画なんかも同様ですね。最後に開示したはいいがスコアが低い恐れがあるというリスクもあります。特にダイバーシティや女性管理職比率、エンゲージメントのスコアなど。開示したら、投資家が逆に離れていくなんてことになるかもしれません💦

課題は山積しますが、人的資本開示のフィバーは加熱する一方ですし、企業は対応していくことが求められるでしょう。