ベテラン管理職とは自分自身のことですが、自戒の念を込めてベテラン管理職が陥りやすい罠について考えて見たいと思います。
ベテラン管理職が故に陥る罠
ベテランになると経験の引き出しが増えます。経験が増えれば増えるほど、判断力は研ぎ澄まされます。短時間で最良の選択を選ぶことができるので、多くの判断業務が可能です。職場を取り巻く問題が、ベテラン管理職がかつて遭遇したことのあるテーマであれば、その知見がフル活用できます。ある程度、目算が立つのであれば後はスピード勝負。意思決定者がトップダウンで動くと成果も自然とついてきます。一方、初めてのテーマについては、ベテランの経験が活用できません。そんな事は誰もが百も承知ですが、多くの管理職がこの穴に自ら飛び込みます。その理由は大きく二つです。まずは問題を既存パターンと同じとして認識しまうケース、二つ目は自己効力感が強すぎるケースです。
問題を既存パターンと同じと認識してしまう
実は新しいパターンの問題なのに、既存パターンとして認識して問題解決を図ろうとしてしまうことがあります。明らかに未知のテーマであれば慎重にアプローチしますが、似たような事象に対してはパターン化してしまいがちです。例えば部下育成。教える内容は変わらないけど、教わる側の価値観や仕事環境が変わっているのに、同じような育成を試みて上手く上手くいかなかったとか。飲み込みの悪い部下のせいにしてしまったり。それを防ぐには、現場、現物、現在をあるがままに受け入れようとする態度です。
自己効力感の強すぎるのが仇となる
管理職になると、メンバーから様々な問題について相談を受けるようになります。会議や打ち合わせにも呼ばれる機会が増えます。側から見ても忙しそうだし、本人も毎日多忙だと感じています。意思決定も求められるので、自分がこの職場を回している、自分が職場の中心、自分が職場をリードせねばという意識が高くなります。当事者意識を持てている状態なので、悪いことではないですが、自信が過信に変わると判断ミスを起こしがちです。また、自分の能力を越えている問題も、自分が率先して解決しようと試みて、かえって問題が複雑化してしまったりします。苦手な領域や未知の領域は自分よりその問題に精通しているメンバーに任せた方が、いいアイデアが生まれることはよくあります。
映画マイ・インターンでロバート・デニーロが演じたようなベテランなんて理想の姿です。もっともデニーロの役柄は管理職ではなく、インターンですが。それでも、サーバントリーダーシップを発揮するとはどういう事かを示唆しています。ベテラン管理職になるほど、謙虚さと丁寧さを心がけたいものです。