私の生業は企業の人材育成を支援することです。イメージしやすいのは管理職研修や新入社員研修の企画・運営です。コロナ禍になってから、各社でリモートワークが当たり前になりました。そんなリモートワークで最も苦労しているのが新入社員です。今日はコロナ禍の新入社員育成について考えてみます。
そもそもトランジションは大変
人は節目節目で変化や適応を求められます。幼稚園から小学生、小学生から中学生、中学生から高校生、高校生から大学や専門学校・・・etc。そして学生から社会人。昔は多くの人が、このある段階から次の段階へたやすく適応できていました。いや、本当は適応してなかったけど、声を出さずに我慢していただけかもしれませんが。うちの娘は小学二年生の冬から不登校です。娘を見ているとトランジションというのは当たり前のことではなく、大変なことなのだと気づかされます。話題が横道にそれました。学生から社会人へのトランジションで苦労する新入社員がコロナ前から増えてきました。トランジションが難しくなってきた理由は分かりません。代表的な理由として言われるのは働く人々の価値観の多様化だったり、受け入れる側の指導育成力の低下、仕事の細分化によるロールモデル不在。色々な要素が絡んでいるのだと思います。このように、ただでさえ学生から社会人へのトランジションが難しくなっている時代にコロナ禍に私たちは襲われました。
観察と模倣の機会が奪われた
人の成長の7割は、現場での仕事経験です。周囲の仕事が出来る上司や先輩の姿を観察しながら、模倣して仕事を覚えていきます。そこに上司や先輩からのオフィシャルな指導と、残業やタバコ部屋でのインフォーマルな指導が混ざり合うわけです。1人で出来なかったことが他者の助けを借りながり、少しづつ出来るようになる。出来ることが増えるにつれ、仕事への不安、職場の人間関係の不安、将来のキャリアへの不安が解消されていく。そのようなプロセスを通して、新入社員は学生から社会人へ移行していきます。コロナはこの観察と模倣の機会を奪いました。リモートワークで先輩や上司と会社で会えないわけですから。どんな風に仕事しているか見えません。見えないものは真似しようもありません。そしてもう一つ、コロナが職場から奪ったものが、職場の人間関係の距離感と温度感です。新入社員からしたら、分からない時に誰に聞いたらいいのかが分かりません。どんな程で聞けばいいのかも戸惑います。
学習をデザインする
このような状況を打ち破るためには、かなり育成方法を工夫する必要があります。身につける必要があるスキルや知識を洗い出すだけでなく、どんな経験が必要なのか。職場のメンバーと関係性を築くためには、どんな仕事をアサインするのか。一緒に取り組むのか。職場経験を振り返る振り返りの機会を誰とどんな頻度で行うのか。個人学習にはどんなツールを提供するのか。従来は意識しなくても、職場に行けば存在した環境や経験をいかに見える化、具体化していくかが問われるわけです。学習環境✖︎学習プロセス✖︎学習形態をかけあわせて、新入社員の育成を設計していかなければならない時代です。