クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【人材育成】育成の谷をどう超えるのか

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私の生業は企業の人材育成を支援することです。イメージしやすいのは、企業で実施する管理職研修や新入社員研修です。私たちが提供している研修は、人の育成に貢献できることは限られています。ビジネスパーソンの成長は現場経験の影響が大きいですし、それを日々サポートする上司や先輩社員のOJTが重要なのは変わりません。今日はOJTのお話です。

一人前の直前が最も育成手腕が問われる

ビジネスパーソンの育成は、育成される側の成熟度にあわせて変化させるのが原則です。何も分からない新人や仕事経験の浅い若手には、ティーチング的な指導を。できることが増えてきたら、自分達で考えて行動するようにコーチング的アプローチが増えてきます。ここまでは、それほど難しい話ではありません。もっともこのレベルの育成や指導をしていない管理職、先輩社員も多いのですが。。。大変なのが、この次のレベルに引き上げる時です。指示されたことは一見できるように見えるので、育成が計画的に実施されないで事実上放任になっているケースがあります。この後は都度、仕事で失敗したら適宜指導だけ行います。後は自力で成長しろというスタンスです。でも、自分で独力で仕事をできるようになる直前が、最も育成手腕が問われます。

 

やらせる。でも失敗させない。

これはあるシステムベンダーの人事部長さんから聞いた話です。その会社は社員が数万人いる大きな会社です。そんな会社の中で、人の育成が上手いて評判の課長さんがいます。彼に部下をあずければエース級のSEに育つと言われているそうです。実際、数多くのエース級の人材が排出されてきたそうです。当然、人事部としては、どんな育成をしているのか興味があるので、本人と関係者にインタビューを行いました。他の課長とひとつだけかなり異なる育成ステップが見られたそうです。育成の最終段階として、少し背伸びした仕事をアサインさせ任せるそうです。仕事ぶりを観察しながら、ここを越えたら納期に間に合わないギリギリの所で介入に入るそうです。もちろん、課長ひとりだけでサポートできないので、他のメンバーに緊急召集をかけて危機を回避します。メンバーとは事前に「このらままだと危険そうだ」は共有しておくそうです。そして、無事仕事が終了した後に、仕事に関わった振り返りミーティングを1時間程開催します。本人の振り返りを促し、他のメンバーからもフィードバックを行います。このようなタフな経験を乗り越えることで、自走できるようになるそうです。

指導される側の力量を理解し、仕事の内容も把握しつつ、支援を仰げるリソースも確保できてからこそ成り立つ育成方法です。助けてくれる先輩達も、過去同じ経験を通ってきているので親身にフィードバックしてくれます。当然、先輩達との関係性も良くなり、その後の指導もスムーズになります。教え合う職場風土を醸成している事自体が素晴らしいですよね。