クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

昔の日本企業は人材育成がうまかったのか?

企業の経営者や人事担当役員にお会いして話をすると、「昔のほうがよく人材が育った」という発言に出会うことがあります。でも、昔の管理者の方が育成が上手だったのか?今より優れた研修を実施していたかというと疑問を感じます。昔の思い出は誰でも美化しがちですし。。。

 

結論をお話しすると、決して昔の日本企業は人材育成が上手かったわけではないと思います。でも偶然にも人が育つ条件が整っていたのだと私は思います。人の成長は7割が現場だと以前書きましたが、濃密な仕事経験と職場環境が揃っていたため、ビジネスパーソンが自然に育つ環境が揃っていたのだと思います。具体的には以下の5点です。

 

①長期雇用

高度成長期、Japan as No1と呼ばれた80年代、バブルの90年代そして2000年まで、日本企業の多くは長期雇用が前提でした。どんな職業でも熟達化には10年かかると言われています。長期雇用だからこそ、人が成長するのに十分な時間を与えられる余裕が企業側にもありました。また仕事で失敗しても、次のチャンスももらえました。今は企業側にも余裕がありません。現場で大きな失敗をしたら次のチャンスはなかなか巡ってきません。

 

年功序列

長期雇用と連動しますが、年功序列の人事が昔は基本でした。そのため上司や先輩を見れば、自分の5年後、10年後がイメージできたということです。こんな風に仕事をしてこんな風に頑張れば、将来は自分はこんなポジションについてこれだけの給料がもらえる。ロールモデルが身近に大勢いたんですね。目指す目標が明確だと努力しやすいですよね。

 

③濃密な人間関係

職場環境がものすごく濃密でした。仕事終わったら、そのまま職場の上司や同僚と飲みにケーション。プライベートでもスキー行ったり、ゴルフしたり、社内運動会があったり。職場の人間関係が濃密だったんですね。濃密だと当然、コミュニケーションの機会も多くなります。上司や先輩からの薫陶だったり、小言だったり、アドバイスだったり、いわゆるフィードバックされる機会が職場にゴロゴロ転がっていたんですよね。言い換えれば、成長に必要な「経験を振り返る機会」がたくさんあったのだと思います。

 

④誰でも頑張れば成功体験を積めた

バブルの崩壊までは、日本の企業の多くが海外に追いつけ追い越せで、より早く、より安く、より品質よいものをつくれば売上拡大できた時代です。そんな右肩あがりの時代に企業で働いていた人は、個人の頑張り=仕事の成果につながりやすかったのだと思います。成功体験は自信につながり、よりストレッチした仕事にチャレンジできたのだと思います。

 

⑤40歳以上は対応力がある個人が多かった

40代以上は、精神論とか根性論がわりとまだ普通に残っていた時代をサバイバルしてきた経験が多いと思います。だから会社に入っても、懇切丁寧な指導を受けなくても、上司や先輩から仕事のコツを見て盗み、身につける術をもっている人も多かったと思います。

 

上記のような、人が成長する条件が今は多くの企業で整っていません。企業はマーケットから短期の業績を求められます。そのため仕事では失敗が許容できなくなっています。雇用形態も正社員ではなく非正規が増え、多くが短期雇用です。企業は景気が悪くなれば人をコストとして切り捨ててしまいます。仕事を習熟する機会も与えられません。職場も雇用形態が複雑化し、そもそも少ない人数で仕事をやりくりしているため余裕がありません。さらに成果主義型の賃金体系が増え、自分以外の仕事にも関心が持てなくなってきています。対応力がある人も少なくなってきています。同期とは仲がいいけど、先輩や上司とはコミュニケーションがとりづらい若手社員。みんな毎日頑張っているんだけど、成長実感をもつことができない。。。

 

企業もどうやったら人材を育成できるのか、個人もどうやったらキャリアアップできるのか相当考えて行動しないと生き残りが難しい時代に突入したと感じています。