人生100年時代、DXへの転換と併せてリカレント教育やリスキリングなんて言葉をよく目にするようになりました。このブログでも「学び直し」や「学習棄却」に関して何度か記事にしました、今日はこの学習棄却に関してもう少し深く考えてみたいと思います。
得意技の賞味期限
私はJリーグの横浜F・マリノスのサポーターでもあります。もうサッカーを見出して30年経ちました。近年、感じるのは戦術の賞味期限の短さです。トレーニングで最適なフォーメーションや戦術を構築できても、すぐに対策されて無効化されます。得意技を極めれば極めるほど、相手チームは対策をしやすくなります。
ビジネスパーソンの成長も似ています。新人時代は何も秀でたものを持ちません。経験を糧にしながら、知識やスキルの幅が広がっていきます。自分の得意技が増えてくるわけです。やがて、その得意技は社内外でも認知されます。「〇〇についてはA君に聞けばいいよ」「△△についてはB君に任せておけば安心だ」しかし、その武器が強ければ強いほど多くのビジネスパーソンは壁にぶつかります。特にメンバーから管理職に昇進した時なんかそうですね。自らのプレイヤー時代のやり方を、メンバーに押しつけようとすると上手くいかないことが多いです。優れた管理職は、自分のやり方が通用しないと感じたら、そこで学習棄却を行なっています。自分のやり方をリセットするわけです。
何を学習棄却するのか
さて、では学習棄却とは何を捨てることなのでしょうか?学習棄却する対象は二つあります。「信念や仕事の進め方」と「知識やスキル」です。前者は中核的な学習棄却、後者は表層的な学習棄却です。ちょっと難しい言葉ですね💦
横浜F・マリノスのチームの例でお話しします。このチームの以前のアイデンティティは、4対3で勝つより1対0で勝つ事でした。強固な守備と勝利に重きを置いていました。選手もスタッフもサポーターも。しかし、チームはアタッキングフットボールを掲げ、2018年にアンジェ・ポステゴグルー監督を招聘し攻撃的サッカーに180度方針を転換します。しかし、そんなに簡単に転換できる訳ありません。2018シーズンは残留争いに巻き込まれます。それまでのフットボールとは全く異なるアプローチをして負け続けます。ここでチームも選手もサポーターも葛藤が起きるわけです。以前のチームの戦い方やアイデンティティを捨てて、新しい信念を獲得するのか?それともチームが降格したら元も子もないので以前のやり方に戻すのか?チームは中核的な学習棄却を決断し、2019シーズンの優勝に繋がります。今やJリーグをリードする攻撃的で魅力的なフットボールを展開するチームとして認知されるようになりました。
一方、表層的な学習棄却は、現在の横浜F・マリノスが行っていることです。今さらアタッキングフットボールの旗を下ろすことはありません。アタッキングフットボールを土台にしながは、相手チームに勝つために、新しい選手や戦術をアップデートしています。このように表層的な学習棄却は多くの組織や人が行なっていることです。そうしないと成長しないわけですから。