クマ坊の日記

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【経営】SDGsとポーター教授とネスレ

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日本では、SDGsやESGというキーワードがHOTワードになっています。ただ前回の記事で述べてように、単純にこのキーワードに踊っているだけでは経営は上手くいかないように思います。今日はSDGsと企業経営について考えてみます。

 

理想だけでは食っていけない

SDGsは社会や地球の持続可能性という崇高な理想を掲げています。その事は私も凄く共感できます。ただ、考えなしに賛同するだけでは企業は生き残っていけないでしょう。社会課題をいかに経営に組み込んでいくかについて考えがない企業は淘汰されていくと私は思います。地球環境や社会課題は、真面目にやればやるほど企業価値の向上には繋がりません。困っている人が沢山いるから、真面目に取り組めば売上は上がります。問題はそれ以上にコストがかかる点です。いくら良いことをしていても、企業価値が上がらなければ投資家からはNO!を突きつけられるのは容易に想像がつきます。綺麗ごとだけでは経営は成り立ちません。逆を言えば社会課題は解決が難しいから、今も残っているとも言えます。だから、これから企業が考えなくてはいけないのは、社会価値を事業価値に変換し続ける知恵と戦略を構築することです。

 

ポーター先生のCSV理論

そんな経営の将来像を提言したのが、このブログでもたびたび取り上げている、マーケティングの第一人者であるマイケル・E・ポーター教授です。2011年に発表された「Creating Shared Value」という論文で広く知られるようになります。

この中で、ポーター教授はCSVを「社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値を創造し、同時に、経済的価値が創造されるというアプローチである」と定義しています。このポーター先生に影響を与えた企業があります。それがスイスの巨人であるネスレです。

 

ネスレ

世界最大の食品メーカーです。日本だとコーヒーやキットカットがお馴染みですよね。ネスレSDGsが採択される遥か前、2000年前後から社会価値を経済価値に置き換える経営を進めています。

ネスレコンプライアンスを土台に、地球環境などに配慮した上で、自分達の存在意義を「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します」としています。SDGsの目標達成だけであれば、地球環境への配慮だけで十分です。でも、ネスレはかつてのゴールドブレントの宣伝を地でいくように「違いがわかる企業」だったわけです。地球環境大事だけど、それはネスレの本業ではない。環境に配慮するだけでは、企業価値は向上しない。そこまでしっかりと絵を描いていました。

「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献すること」を軸とした企業経営に舵をきります。分かりやすい動きとしては、ピザやアイスクリーム等の事業売却する一方で医療食品事業等を買収していきます。ネスレが掲げたパーパス(存在意義)に沿った意思決定を行いました。当時、ピザ事業もアイスクリーム事業は業績は良かったのにも関わらず、自分達が目指すべき志とは違うと言う理由で。そのような企業経営を続けていくことで、ネスレは約20年間で企業価値を5倍の30兆円まで高めています。食品業界というどちらかと言えば古い産業でここまで価値を高めるのは凄くことです。

 

したたかな戦略

思い切って舵を切ったのは大英断ですが、それ以上に関心したのは、そのしたたかな戦略です。いくら崇高な理想を掲げた所で、短期業績を気にする株主からの反対は必死です。そこで当時の経営者は考えました。社会価値と経済価値は両立できるし、企業価値はむしろ高まることを世の中に伝えていかねばならない。。。そこで、目をつけたのがマーケティング界の第一人者であるポーター教授でした。2006年からポーター教授はネスレのアドバイザリーボードの一員になっています。ポーター教授としても、新しい論文を書くネタは探していたのだと思います。ポーター教授は新しい論文を。ネスレはポーター教授の発信力を期待していたように思います。あくまで私の妄想ですが。自分達で新しい価値観を築いていこうとは間違いなく考えていたのだと思います。

 

高い志

ネスレは世界最大の食品会社があるが故に、地球の食料事情や環境破壊について多くの情報が集まっていたのでしゅう。また、そのような状況が自分達のビジネスの持続性にとってリスクだと言うことも分かっていたのだと思います。でも、考えてみてください。そうは言っても30年後、50年後な話なわけです。なかなか意思決定できることではありません。経営者の見識と胆力は凄いものです。

 

日本企業の経営者に問われていること

今、日本で盛り上がっているSDGsに取り組むと言う事は、ネスレのように経営の志や進め方を根本的に問い直されると言うことです。資本主義経済の理論で動いている株式市場で、上場会社がそれを取り組むのは茨の道です。経営者の優劣がより鮮明になるだろうし、生半可な考えでSDGsに取り組むと、逆に大きく企業価値を毀損することに繋がるように私は考えます。