クマ坊の日記

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【ビジネススキル】横浜F・マリノスに学ぶ最強のチームを作る方法

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私はJリーグ横浜F・マリノスのサポーターです。開幕当時から応援しているので、もう30年来チームを見てきました。長い歴史の中では思うように結果を残せない時期もありました。ここ近年は名実共にリーグを代表するチームに成長していますが、この5年間の変化は大変なものでした。今日は横浜F・マリノスを題材にしながら、最強のチームの作り方について考えてみます。

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横浜F・マリノスのざっくりとした歴史

横浜F・マリノスオリジナル10と呼ばれJリーグ開幕時から参加しているチームです。日本リーグ時代から、ヴェルディと双璧をなしていました。2003年、2004年は岡田監督を擁してリーグ二連覇も達成しています。そんな歴史のあるチームなので、過去所属していた多くが日本代表の中心選手であり、ラモン・ディアスフリオ・サリナスなど海外の有名選手も所属していたこともあります。しかし。2004年の優勝を最後に2019年までリーグ優勝から遠ざかっていました。そんな横浜F・マリノスが変わってきたのは、2018年にアンジェ・ポステコグルー監督がアタッキングフットボールを掲げて指揮を執るようになってからでした。そしてその後を引き継いたケヴィン・マスカット監督の元でも、昨年リーグ優勝を決めました。アンジェ監督になってから劇的に変化したのがチームコンセプトになります。それまでは伝統的に堅守速攻を得意とするチームでした。1対0で勝つことに美徳を感じているカルチャーでした。しかし、アンジェ監督になってからは攻めて攻めて攻めまくるというカラーに180度転換しました。現在もアタッキングフットボールを掲げるプレースタイルを維持しています。

いちファンとして、チームのカルチャーが180度転換できたのは驚きでしたし、その変化のプロセスはワクワクしながら応援していました。

人材育成や組織開発を生業にしている立場の者としても、とても興味深い変化でした。チームビルディングに関しては様々な理論が研究されていますが、それらの理論にも当て嵌まる部分が多いなと感じています。

目標を握り続ける狂気

チームビルディングのどの理論でも共通して謳われているのは、魅力的な目標、ゴールを掲げることです。どの企業でも、変革と挑戦という言葉がこの時期は踊っていることも多いのではないでしょうか。でも、多くは形骸化し、誰も本気でコミットメントしない状態に陥ることが多いようにも思います。ゴールが現実離れすればするほど、現場はしらけてしまったりもします。横浜F・マリノスでアンジェがアタッキングフットボールを掲げた時も、賛同する人も多かった反面、「そんな理想なサッカーは無理だ!」という懐疑的な目もありました。実際、2018年は得点数は増えましたが、あり得ないようなド派手な負け方も繰り返しました。あわやチームはJ2降格の危機にも瀕しました。ビジネスの文脈で当てはめれば、理想的なビジョンや戦略は発表したけど、業績は振るわず、株価は下がりっぱなし。ステークホルダーからは、激しい突上げを喰らっているようなものです。そんな嵐の中でも、リーダーのアンジェは掲げた旗を下ろすことはしませんでした。より過激に、側から見れば頭のネジかいかれているかのような狂気を孕んだ信念を貫きます。その熱は周囲の人に伝播していきます。

その様を見て感じたのは、目標自体がメンバーから共感されるような内容でなければなりません。いや、目標とかゴールとかいうような生優しいものではなく、信念とか狂気とか信仰に近いようなものを感じました。世界をひっくり返すには、それぐらいの熱量、人生を全てかけるような必死さも必要なのでしょう。

強力な支援者の存在

リーダーが強烈なリーダーシップを発揮したとしても、初めから物事が順調に進むことはありません。理想通りに進まず、むしろ現状が悪化するケースが多いです。そんな窮地を支えてくれる強力な支援者の存在が不可欠です。横浜F・マリノスで言えば、スタジアムで横断幕を抱えてアンジェへの支持を表明したサポーターであり、最後までアンジェを支えたクラブの経営陣でした。これは私たちの職場でも当てはまることです。現場のメンバーからの支持と、経営トップが最後まで改革リーダーを守ることが出来るかが鍵となります。特に後者は、財務面においても権限委譲の面でも強力な支援者がいるかいないかでは、大きな違いがあります。理想は重要ですが、理想だけで突破できるほど現実は甘くないということです。

タスクを一つずつ解決する実行力

次に大切なのは、目標達成に必要な課題を一つずつ解決する実行力です。そして忘れてならないのが課題は常に変化するという認識です。横浜F・マリノスで言えば、シーズン途中に移籍や怪我でメンバーがいなくなる事もあります。効果的であった戦術も相手チームに研究され、それを打ち破る新たな戦術の立案と、それを選手に落とし込むトレーニングなど。刻々と取り巻く環境は変化するので、動きながら課題解決していくことが求められます。日本の大企業は無駄を嫌らうので、現状をしっかり吟味してから着手し、時間的にロスして結果として成果をあげれない場合があります。担当する仕事の性格によっては、安全面やコスト面から、拙速な課題解決は避けなくていけない事情もあるかと思います。しかし、完全な計画でなくても、仮説を構築して、不完全なものを修正していく姿勢も求められます。また、自分達がアクションした事に反応がないと、チームに勢いが生まれませんしね。

相互にフィードバックできるファミリーの絆

横浜F・マリノスはアンジェが来てから、マリノスファミリーという言葉を使うようになりました。チームの中だけでなく、チームに関わる、チームに関わってきた全ての人々をリスペクトしてマリノスファミリーと呼びます。人間は不完全だけど、ファミリーだからどんな時も支えあう。お互いをプッシュし合って高みを目指す。チームの為に、言いたいことをフィードバックしあう文化が根付いています。試合を見ていると、選手同士でよく意見交換をしている光景を目にします。サポーターもSNS上を中心に意見交換や情報発信が多いように思います。これは職場でも同じことがいえます。心理的安全性という言葉に代表されるように、強いチームは忌憚のない意見交換をしています。でも、そんなことができる職場は圧倒的にレアでしょう。社内では常に相対評価に晒されているわけですから、程度の差こそあれオープンにフィードバックし合えるのは難しいことです。

最強のチームの構造はこのように説明はできるのですが、人が介在するので実行は難しいです。難しい事を理解しているが故に、そういうチームに私たちは魅了されるのだと思います。

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