クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【人材育成】孤独な自己責任

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私の生業は企業の人材育成支援です。管理職や新入新入研修の企画や実施をしたり、戦略人事と連動した教育体系の設計を担当したりしています。今日は企業が人材育成を展開する際に、盲点になりがちな点を考えます。

自律型人材と孤独な自己責任

企業の人材育成のトレンドは自律型人材です。企業のマネジメント自体が、社員個々の自分らしさを活かそうという風潮です。ダイバーシティ、複線型人事、副業解禁、リモートワークなどの人事施策も個々の特性を活かすという錦の御旗の下、展開されています。個人のキャリア観も自律的なキャリア形成に依っています。転職エージェントのCMも増えましたよね。

このような社会と人々の価値観の変化が、企業の人材育成の在り方にも影響を与えつつありますマネジメントも、キャリア開発も自分らしさを大切にしているから、学びも個々人が自己責任において、個で自律的に進むべきだよねという考え方です。凄く筋も通っているのですが。。。

 

日本の現状

朝の通勤電車に乗ると、新聞を読む人、読書する人が圧倒的に少なくなりました。スマホでゲームやSNSに興じている人がほとんどです。厚生労働省の調査を見ても、ビジネスパーソン自己啓発に勤しむ人は全体の3割弱です。学ばない人が、圧倒的に多いのにもかかわらず、自律的か学びと言う大義名分で、学びを個人の選択に委ねれば、ますます学習格差は広がるでしょう。企業が人材育成を支援するのは戦略の実現の為です。そのため、過度に学びを個人任せすることは、本来の目的を達成できないジレンマを引き起こすようにも想像します。

 

受験勉強とは異なる

企業が学びを個人任せにするとは、選択型の研修やeラーニングなどの教育機会の形で展開します。ここに問題が生じます。そもそも社員で学ぶ人、学ばない人の格差が広がります。また、スキルや知識を個人で学ぶことはできますが、学んだことを職場で実践できるかは別物だということです。学んだことを職場で試せる機会があるのか?上司は支援してくれるのか?それらとセットで設計しないと、個人で完結する受験勉強のような学びで終わってしまいます。企業が人材育成を行うのは、人を資して経営に貢献するためです。現場で使えなければ、1ミリも意味がありません。

 

鍵は管理者

結局、ビジネスパーソンの学びは1人では完結しないわけです。職場風土や上司の支援は不可欠です。そのための鍵は管理者です。管理職の育成は当然ですが、処遇もあげた方が良いでしょう。個々に合わせたマネジメントするという事は、手間ひまが余計にかかります。処遇も上げないと、管理職の成り手がいなくなります。また、人事制度や評価制度の見直しも避けては通れません。自律型人材を育成するのであれば、短絡的に学びを自己責任だけで解決しようとするのではなく、その周辺環境を整えなくてはいけません。