クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【経営】ジョブ型人事制度と青い鳥

f:id:kumabou2016:20210426133555p:image

コロナ禍になる少し前からジョブ型人事制度と言うワードが企業では注目され始めました。企業の人事に長年携わってきた立場の者としては20年前に一世風靡した成果主義導入の時と似たような雰囲気を感じています。今日はジョブ型人事制度について考えてみたいと思います。

 

ジョブ型とメンバーシップ型

ジョブ型人事制度を凄く乱暴に一言で申し上げれば、「座るイス(ポスト)に給料を払いますよ」一方、メンバーシップ型とは 「座ってるヒトに給料払いますよ」と言う人事制度です。

これまではメンバーシップ型の人事制度が日本企業では圧倒的に多数を占めていました。多数を占めているのには理由があります。経済合理性がメンバーシップ型の方が高かったわけです。新卒の可能性のある新入社員を大量に一括採用し、ジョブローテーションを通して人手が足りない事業に補填しながら、働き盛りの社員をパフォーマンスに比べて安く雇用できるメリットです。雇われる側にもメリットがあります。終身雇用が前提なこと。入社時に専門性がなくても、仕事を通じて成長する事ができること。そして肉体的なパフォーマンスが落ちる中高年になった時より高い報酬を得られること。ちょうどライフイベントでも子供の進学等でお金がかかる頃でもありますし。真面目に一生懸命頑張れば報われると言うのが、働く側にとっても魅力的だったわけです。

 

ジョブ型が注目される理由

きっかけは2020年に経団連がジョブ型人事を推奨したことです。その背景は前述したようにメンバーシップ型に経済合理性が見えなくなってきたからです。右肩上がりの経済成長が見込める企業は限られています。メンバーシップ型を維持できない企業の方がますます増えているという事です。また、これから日本社会は働き手が激減します。多様な人材、多様な働き方にあった賃金の払い方ができないと企業は生き残っていけません。例えばDX人材なんかは企業は採用したいのですが、メンバーシップ型だと高度なプロフェッショナル人材が納得するような条件提示ができないわけです。特例で条件を提示できたとしても、マジョリティである旧来から所属する社員からすれば気に食わないわけです。結果、入社してもパフォーマンスが発揮できず退社していく不のサイクルが回ります。

 

ジョブ型のメリットとデメリット

ジョブ型は多様な人材、多様な働き方を進める上で現状のメンバーシップ型の不具合を解消してくれます。プロフェッショナルな人材も採用しやすくなるでしょうし、副業も受け入れやすい。育児や介護でフルタイム働けない人にも、企業、社員双方が納得できる条件も提示してしやすくなります。仕事の範囲も明確に決まるので働く方も周囲に気兼ねなく働けます。なんて考えるのはとても安易なわけで。。。

実際は、経営と現場マネジメントに求められるレベルが格段にあがります。今までであれば指示・命令で済んでいたものが、より戦略や対話が求められるからです。メンバーシップ型であれば、事業環境によって要員構成のバランスが悪くなったら、儲かってない事業から儲かっている事業に異動や配置転換が辞令一つでできたわけです。でも、ジョブ型になると他の職種への異動は難しくなるし、何より本人もそんな前提ではないので対応が難しいでしょう。また、人材育成も停滞するでしょう。自分のポストを脅かす後輩を積極的に育成しようというマインドにはならないでしょう。

 

成果主義とのデジャブを感じる

現在のジョブ型人事に関する議論を眺めていると、2000年代初頭に吹き荒れた成果主義型人事の熱狂と同じものを感じます。当時も年功型人事の限界が謳われ、個人毎の成果に応じて処遇すべだ!という風潮が強くなりました。多くの企業が成果主義型に人事制度を変更しました。しかし、現場では個人毎にそれほど差があるわけではない。差がづけられない問題が出たり、個人の目標は達成してるのに、会社の業績はよくならないような事象が多数発生しました。その結果、年功なのか?成果なのか?それとも好き嫌いなのか?分からない人事制度の残骸だけが残りました。

 

青い鳥は幻想

メンバーシップ型、ジョブ型それぞれにメリット、デメリットがあります。どちらにも共通して言えることは儲けることができなければ、企業の成長が見込めなければどちらの成果も機能しません。逆もまたしかりです。結局、その企業のマネジメントレベル以上の仕事はできないように私は考えます。しかし、経営者は青い鳥を求めて止まないようです。その歪みの影響を受けるのがビジネスパーソンになるわけです。次回はジョブ型人事が社員の能力開発に与える影響について考えてみたいと思います。