前回はテイラーの登場でマネジメント黎明期が幕を開けたことをお伝えしました。発案者のテイラーとの想いとは裏腹に、「科学的管理法は人間性の軽視だ!」と批判を受けます。今回はテイラー後のマネジメント理論について考えます。
ホーソン工場の実験
科学的管理法への批判が高まった反動で、「人」の側面への関心が高まります。そんな中行われたのがウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場での実験です。この工場は給料も高く、福利厚生も充実しており、労働条件は良好でした。しかし、工場の中には理由の分からない不満が燻っていたので、外部のコンサルタントに依頼し、作業能率を向上させるための実験でした。
最初に行われたのは、照明実験と呼ばれ、電灯の明るさと作業能率との関係を調べるものでしたら、結果は、照明を明るくした時の作業能率は高まりましたが、逆に照明を暗くしても作業能率は高まりました。科学的管理法とは全く異なる結果が出てコンサルタントは困り果てます。
エースのエルトン・メイヨー投入!
そこで白羽の矢が立ったのが、ハーバード・ビジネス・スクールに招聘されたばかりのメイヨーでした。メイヨーは選抜された6名の女工さんたちに対して、様々な労働条件を試してみました。結果は、不利な労働環境もものともせず高い生産性を上げ続けました。何てこのような結果になったかを調べてみると、大勢の中から選抜されたということで、やる気とプライドがみなぎり、6名の連帯感も強かったためだと分かりました。まさに精神力の賜物!
続いてメイヨーは、従業員に対する大規模な面接調査を行いました。対象者数は2万人。最初は研究者が面接を行なっていましたが、人手が足りないため、現場マネジャーも面接するようになります。マネジャーは研究者ではないので、難しい質問はできません。そこで、面接方法も自由に変更しました。もはや実験というより雑談です。2万人の雑談メモを渡されて、メイヨーも途方に暮れます。しかし、なんと面接しただけで、職場の生産性があがるという現象が起きます。調べてみると、従業員は話すだけで、リフレクションが出来ることで勝手に不満が解消されていました。一方マネジャーも、部下たちの状況を把握することで対策を考えるようになります。その結果、職場の生産性が上がったというわけです。
労働意欲は人間関係できまる
これらの実験結果を踏まえて、メイヨーは「人間とは感情の動物であり、外的な条件よりも、社会的承認の欲求を重視したり、感情や態度に配慮したり、職場内の良好な人間関係を構築する方が、生産性に影響する!」と結論づけました。これを機に、「人」への関心が高まり、人間関係論と呼ばれる理論や実践上の提案が次々と生まれるようになります。
テイラーもメイヨーも現場を観察、分析することから、マネジメント理論を生み出しました。着眼点がテイラーは仕事の側面で定量的、メイヨーは人の側面で定性的だったに過ぎません。両者とも組織の生産性とそこで働く人々の労働条件をよくしたいと願いは同じだったように私は考えます。