クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【book】感じるオープンダイアローグ

 

今日は本のご紹介です。森川すいめいさんの「感じるオープンダイアローグ」です。森川さんは精神科医です。

オープンダイアローグとは、フィンランド精神科医やセラピスト、看護師さん達が現場で実践してきた療法です。療法のポイントは、

  1. 患者(本人)抜きには、いかなる決定も行わない
  2. 患者さんと医師だけでなく、患者の家族、看護師、セラピストなどが一堂に会して対話を行う
  3. 場合によっては、患者さん本人の前で、医師や看護師、セラピストなどが患者の話をする。患者はこの話を聞いてから、さらに2の対話を深める

 

しかし、この本はHow toを紹介する本ではありません。森川さんがオープンダイアローグにどのような経緯で出会い、オープンダイアローグを学ぶ過程でどんなことを感じたのかが赤裸々に記載されています。森川さんの葛藤や苦しみなど、よくこれほど自己開示した文章を掲載したものだと感心しました。あまりの迫力にあっという間に読めてしまいました。

 

私はこの本を読むまで、日本の精神科について全く知りませんでした。日本は世界で最も多くの精神病院があるそうです。病床数は世界の5分の一。そして、長期に渡って入院する患者が最も多い国です。日本の精神科の原則は、患者さんの治療方針は、患者抜きで医師が決める。患者と医師との対話は難しく、患者が暴れないように管理するのが医療機関の役割と考えられてきたそうです。今はだいぶ考え方は変わってきているようですが、従来前の治療の仕方をしている病院も多いようです。そのような医療機関も悪意があってそのような対応をしているわけではありません。患者が暴れて患者本人や周囲に危険が及ばないように考えて対応しているそうです。そんな現状とは180度異なる療法がオープンダイアローグです。オープンに対話をする事だけで、治療効果があるのは素晴らしいことです。

一方、手法を真似ただけでは効果は得られないようにも感じました。私の本業である企業の人材育成でも同じなのですが、「誰が」対話するのかが重要に感じました。長期に渡って対話を継続するのだから、人として信頼できるのが大前提です。人としての有り様が問われます。でも、完璧な人間なんて誰一人いませんから、自分の不完全さを認めつつ、それでも他者に寄り添いたい、役立ちたいと言う想いが大切なように感じました。

とても素晴らしい本です。対話について学びたい方には、お勧めの一冊です。