前回の記事では、ラインマネジメントとプロジェクトマネジメントの違いと、プロジェクトマネジメント立ち上げ時のポイントについての記事を掲載しました。今日はプロジェクトがスタートとした後に、プロジェクト責任者が留意すべきポイントを考えてみたいと思います。
よく観察し、よく対話し、適度な緊張感を保つ
前回の記事では、プロジェクトマネジメントは不確実性が高いので、計画には落とし込むけど計画通り運用しないと書きました。ただこれは、現場に丸投げするという意味ではありません。プロジェクトの責任者は現場にあちこち顔を出して、メンバーと対話することが必要です。会議とか改った場ではなく、メンバーの席や現場にふらりと立ち寄って「仕事どう?」とか、仕事ぶりを褒め称えたりとか、逆に相談を受けたりとか。一緒にプロジェクトに携わっている感をメンバーに感じてもらえるように意識を払います。そうやって対話してると、情報が集まってきます。それらの情報を使ってまた対話します。「○○の作業工程、難儀してると聞いたんだけど。どんな感じ?」「中間報告のグラフのデザインとても観やすかった」てな具合で。メンバーからすれば、その場にいなかったのに何でその事を知ってるの?と驚くし、小さな創意工夫を褒められると嬉しいじゃないですか。
でも、一生懸命対話をしてはいけません。やり続けるのが本人苦しくなるから。だからふらっと、無理のない範囲内でやるのが大切です。タモリさんに会ったことはありませんが、画面越しから伝わってくる自然体の立ち振る舞いが私の理想です。プロジェクトの責任者だからと言って張り切り過ぎると上手くいかないというのが私の経験則です。
優先順位を明らかにする
メンバーに主体的に働いてもらうのがプロジェクトの原則ですが、なんでもかんでもメンバーの意見を尊重することではありません。プロジェクトを成功に導くための最低の水準をプロジェクト責任者は持っていなくてはいけませんし、メンバーにも伝えるようにします。そこだけは外せないっていう所です。リソースが潤沢であれば問題ないですが、そんなプロジェクトを私は見たことがありません。リソースは限られるので、優先順位を明確にしておかないと現場は混乱します。メンバーには出来なくて、プロジェクト責任者にだけ出来る事は決める事ですから。
正解はないので状況対応するしかない
プロジェクトを進める上の原則は書きましたが、実際のプロジェクトは毎回、複雑だと実感します。結果としては上手くいったとしても、それに至る過程は山あり谷ありなわけです。部門間やメンバー間の行き違いやコンフリクトは必ず発生します。プロジェクトに真剣に取り組めば取り組むほど。予期せぬトラブルも発生します。結局、プロジェクトの責任者は変化する状況をいち早く掴んで、事が大きくなる前に対処していく他ないように思います。そのためには、メンバーとの対話を欠かさないことが求められるし、対話の質が向上するように意識しなければならない。対話の質を向上するための秘訣は謙虚であること、学び続けること。勇気を持つこと。
プロジェクトの責任者だからと言って、全てを理解、把握は出来ないわけです。そういう前提に基づいて、謙虚でいる。メンバーにも頼る。知らない事、分からない事に対して学び続ける。深くなくてもいいから、各専門家のメンバーと対話ができる程度のリテラシーを身につける。そして、最後の意思決定はプロジェクト責任者しかできません。下した意思決定が正解か否かは分かりませんが、勇気を持って決断をする。そんな事の繰り返しが、プロジェクトを成功に導くのではないかと私は考えます。ちょっとの幸運も必要ですが。
私がプロジェクト責任者を務める理由
今回のような全社を巻き込んでのプロジェクトの責任者は初めてですが、小規模のプロジェクトは年がら年中体験しています。コンサルタントの仕事がプロジェクト仕事なわけですから。プロジェクトが始まる前は毎回が不安です。上手くいくのだろうか?なんでこんな面倒なプロジェクトを引き受けてしまったんだろう?とか割とネガティヴな感情に襲われます。それでも仕事を続けるのは、プロジェクト仕事の面白さも実感しているためだと感じています。例えて言うなら前人未到の山を、一人ではとても登れないような山も、メンバーと力を合わせることで踏破できる。乗り越えた時の達成感と高揚を味わいたくて、引き受けている面もあるように思います。プロジェクト終わった後のメンバーとの祝杯も楽しみなんですよね。プロジェクト仕事は自分の性分に合っている部分もあるのでしょう。