前回の記事で、産業革命の時代にマネジメントが誕生し、その内容は科学的管理法と、そのアンチテーゼとしてうまれた人間関係論だということをお伝えしました。本日はその後のマネジメントの歴史を考えてみたいと思います。
人間関係論の進化
人間関係論はその後、「行動科学」に受け継がれます。行動科学とは一言で申し上げれば「組織における人間の行動を科学的に明らかにする学問」です。その領域は経営学、心理学、社会学、組織論などの多岐に渡ります。
行動科学の古典で理解しておくべきは3人の先生です。マズロー先生、マグレガー先生、ハーズバーグ先生です。
アブラハム・マズロー先生の欲求五段階説
アブラハム・マズロー先生はアメリカの心理学者で人間性心理学の生みの親です。心理学にはいくつかの大きな流派があります。フロイトなんていう心理学者の名前は聞いたことありますか?フロイト先生は「人間は何か意識の下に抑圧されたもの、ネガティヴなものを抱えていて、それが病理になっているんだ!」という人間観を持っていました。そのフロイト先生に真っ向か反対したのが、マズロー先生です。マズロー先生は「人間は抑圧されたものから動かされるような存在なんかじゃない!もともと自分がありたい姿を目指して、自ら成長するものだ!」という人間観を抱いていました。余談ですがマズロー先生が駆け抜けた時代は、ベトナムの反戦運動や公民権運動など反体制が渦巻く時代でした。人間性の回復に焦点が当てられました。マズロー先生の考えかたにも影響を与えたように私は考えます。
X理論とY理論
マズロー先生の考え方をマネジメントに応用したのがダグラス・マクレガー先生です。彼は人間観としてX理論とY理論を主張しました。X理論とは、「人間は本来怠けもので仕事をしない。強制や命令は必要だ」という性悪説に沿った考え方でした。Y理論はその逆です。「人は適切な条件のもとでは主体的かつ創造的に仕事をする」という考えです。
動機づけ要因と衛生要因
マグレガー先生の主張は、フレデリック・ハーズバーグ先生の研究に繋がります。ハーズバーグ先生は、仕事における不満と満足について研究します。その結果、不満要因は給与、人間関係、作業条件など。満足要因は仕事の達成、承認、仕事そのもの、昇進などであり、両方は別物であることを明らかにしました。ちなみに不満を与える要因を衛生要因、満足を与える要因を動機づけ要因と言います。そして給与や作業条件などを管理するマネジメントは衛生要因を維持しているに過ぎず、動機付けが重要だと主張しました。
その後、チェスター・バーナード先生によって、組織づくりの3条件が発明され、本格的なマネジメントが到来するんです。
ここまでご紹介したののは、マネジメントでは古典にあたる理論ですが、いまでも説得力のあるパワフルな理論です。人はそんなに変わらないという証左ですかね。