今日は叱り方のお話。若い管理職からの最近増えてきた相談は「自分の部下指導がパワハラにならないか心配」「どうやって叱ればいいか分からない」というものです。確かにちょっと指導しただけでも、「ちょっと気分が・・・」なんていう若手も増えてきましたよね。そのような質問をしてくる人には、「自分の指導がパワハラにならないか?」と心配するような管理職は、パワハラしないから安心してくださいとお伝えします。ただ、これでは専門的なアドバイスにはならないので、もう少し詳しい解説をしたいと思います。
目次
パワハラは増えているのか
平成29年に厚生労働省から発表された「平成28年度個別労働紛争解決制度施行状況」では、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数は70,197件となりました。これは、民事上の個別労働紛争相談の中ではダントツであり、5年連続でトップ増加傾向にあります。昔のほうが、今よりも酷いパワハラは多かった感覚がありますが当時は部下が上司を訴えるとか、会社を訴えるということはほとんどなかったですからね。今は訴えるハードルが下がったということです。社員にしてみれば泣き寝入りする以外の道が確保されているのはいいことだと思います。管理職の立場からすれば、いつ訴えられるかわからないのでビクビクしますよね。
パワハラとは
同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を越えて精神的、身体的苦痛を与える。又は職場環境を悪化させる行為を指します。
職場内での優位性には職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識、経験などの様々な優位性が含まれます。要するに管理職が部下に行われるものだけではなく、先輩・後輩間、時には部下から上司に対して様々な優位性を背景にして行われるものも含まれるという事です。
厚生労働省のパワハラ6類型
国はパワハラを6つの類型に分類しています。
- 身体的な攻撃暴行・傷害
- 精神的な攻撃 脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言
- 人間関係からの切り離し 隔離・仲間外し・無視
- 過大な要求 業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
- 過少な要求 業務上の合理性なく、能力や経験と懸け離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
- 個の侵害 私的なことに過度に立ち入ること 私的な買い物を強制する
私もかつてパワハラ被害に遭いましたが、2番、4番、5番あたりは思い当たりますね。
叱ってもパワハラにならない時
パワハラは絶対反対ですが、管理者として叱らなくてはいけない場面もあります。それは大きく2つの場面です。
- 安全に関わる場合
- 職務に支障をきたす場合
安全は容易にイメージできますよね。身体に危険が及びそうなときに「バカヤロー危ないじゃないか!!!」と叱るのは当然の行為です。職務に支障をきたす場合とは、例えば、指導しても何回も遅刻する社員だったり、就業規則を破る社員、周囲のメンバーに迷惑をかける場合など。本人も周囲も、そりゃ叱って当然だよねという場面です。
管理職が気をつけねばならないのは
つまり叱る場面を誤る管理職はほとんどいません。多くの管理職が誤るのは叱り方です。行動を注意するのはOKですが、仕事と関係ないことまで言うのはアウトです。そもそも叱ると怒るは全く異なることです。叱り方には5つの原則があります。
- 人前で叱らない
- 行動は叱るが人格は否定しない
- 他のメンバーと比較しない
- 長時間叱らない
- 後で必ずフォローする
人を叱るのはパワーがいります。叱るほうも気まずいですしね。ただ管理職になったら叱らなくてはいけない場面もでてきます。私は一緒に働くメンバーは家族と同じだと考えています。もし自分の子供が悪いことをしたら、悪の道に落ちそうになったら必死で叱り、まっとうな道に戻そうとすると思います。部下も同じです。やっぱり仕事上よくないことはフィードバックします。そこで注意をしておかなかったばかりに、晩年、使えないおじさんやおばさんと呼ばれるようになるのは罪つくりのように感じるからです。