前回に引き続いて、ポジティブ心理学のお話です。お題の通り仕事に熱中することと、熟達化との関係について考えてみたいと思います。仕事に限らず、趣味でも、スポーツでもいいんですが寝食忘れてある物事に熱中したことが誰でもあると思います。側から見ているとご飯も食べずによく熱中できるななんて思うものですが、本人からすれば気づいたら夜だったなんていう状況です。このことをポジティブ心理学では、フロー経験なんていいます。
目次
フロー経験とは
心理学者であるミハイ・チクセントミハイ先生が提唱した概念です。スポーツの世界ではゾーンともいいますね。中村俊輔選手のチャンピオンズリーグのマンU戦のフリーキックなんていうのは、フロー経験だったのではないでしょうか?
フロー経験の特徴
- 行為と意識の融合
- 限定された刺激領域への注意
- 自我の損失や忘却、および世界との融合感
- 自分の行為や環境を、自ら支配できているいう感覚
- 首尾一貫した矛盾のない行為が必要とされ、そこに明瞭なフィードバックがある
- 自己目的、つまり他の目的や外発的報酬のために、それをしているわけではない
中村俊輔選手の映像のフリーキックも練習では意味がありません。チャンピオンズリーグという最高の舞台。そして当時最強のチームの一つであったマンチェスターユナイテッド戦。GKも当時3本の指に入った名手ファンデルサール。しかも前回の試合でフリーキックを決めているので相手も警戒している。両チームの戦力差からすると数少ないチャンス。そして勝てばセルティック初のチャンピオンズリーグでの予選勝ち抜きがかかっている。つまり相当難易度が高い展開でした。アドレナリン出まくりですよね。そんな状況と練習で磨いた技術があんな素晴らしいゴールを生み出しました。
仕事も楽しいと自然に成長できる
プロスポーツ選手のような極限のフロー経験は難しいですが、仕事も楽しいとその過程で能力が自然と高まっていきます。私も若いときに仕事が楽しくて楽しくて仕方ない時期がありました。楽しいというか、すごく怖くてキツイ状況なんですがその状況を乗り越えていくことで充実感と有能感を獲得できるような感じです。英語で表現するとenjoyではなくて、fun to job 。まさに熱狂するという感覚です。だから部下を育成したいなら一番いいのは仕事自体に熱狂できるような環境や意味づけをしてあげるのが一番いいです。言い換えれば、本人の能力よりも少しストレッチした仕事をアサインしてあげることです。本人の志向性もあるから難しいですけどね。でも私の理想なマネジメントの状態はメンバー全員がfun to jobを感じられることです。