前回の記事では、日本の大企業でイノベーションが起こりにくい、最大の理由とし「失敗を許容しない文化」が関係していると述べました。今日はそんな風土を変えていくためには、どんな人材が求められ、どんな施策を打っていくべきかを考えます。
不確実な時代と意思決定
イノベーションを起こすと言っても、何が成功するかなんて誰も分かりません。2年前までコロナで世界がこれほど変化すると予測できた人がいないように。視界ZEROの雪山を歩くようなものです。
余談ですが私は学生時代、雪山で遭難しかかったことがあります。まだ、登山を初めて日が浅かったこともありますが、決断を間違っていたら死んでいたかもしれない経験があります。視界をと体力を奪われた中では、恐怖に襲われ判断力も著しく低下します。一緒にいた仲間達がいたから危機を回避できましたが、私の人生に大きな影響を与えた出来事でもありました。
話を戻すと、何がイノベーションに繋がるか分からない状況下では、素早く意思決定して動いてみるしかありません。
意思決定の場数が圧倒的に足りない日本企業
視界が見えない雪山で生き残るために、意思決定するのと同じように、不確実性の高い環境下で意思決定するのは難易度が高いです。この意思決定力と言うのは、トレーニングでは身につきません。理論や知識的な事は理解できても、実際の意思決定の場面では胆力が問われるからです。何かを選べば、何かを棄てるということです。どんな決断も恐怖と隣り合わせです。場数を踏むことでしか意思決定力は研ぎ澄まされません。
翻って日本企業の意思決定を振り返ると、若い時に意思決定を求められるのが圧倒的に少ないことに気づかされます。日本企業のほとんどは階層別の組織形態です。意思決定が必要な事項は、社内で然るべきポジションの人間が行うような強固な仕組みが構築されてきました。従来の環境下では合理性があったから、このような意志決定が行われてきました。でも、前述したように環境の変化が激しい現代では、意思決定の場数が少ない人間が、管理職になってから意思決定するというのでは厳しすぎます。
失敗を許容する文化醸成には、若手が重要な意思決定を行う機会を作ることが不可欠です。
若手を選抜して成長機会を与える
いきなり20代を役員に据えるのは難しいでしょうが、部門横断のプロジェクトに抜擢したり、次世代育成研修と称して新規事業開発を担当させてみるなどの人材育成の仕組みを整えることは重要です。大事なのは、プランニングだけで終わらせず、DOまでさせること。DOで終わらせず社内外からのフィードバックを受け、内省させる仕組みも整えることです。足りない能力を補うトレーニングではなく、能力を引き上げるDevelopment の考え方が求められます。もっとも財務的にも余裕がないと、若手にチャンスや能力開発の機会を提供するのは難しいのではありますが。