私の生業は企業の人材育成を支援することです。イメージしやすいのは、新入社員研修や管理職研修です。しかし、私が提供する研修が人の成長に与える影響は、全体を100とすると10%程度の影響しかありません。人の成長の70%はどんな経験をしたかによります。ちなみに残りの20%は上司や周囲からの薫陶や指導です。新入社員が一人前になるまでの研究は多いですが、管理職になった人が成長するためにどんな経験が有効かの知見はまだまだ少ないです。今日は管理職の成長を促す経験について考えてみたいと思います。
育成経験
これは育成をした経験がある方は納得なのではないでしょうか。子育てにも通じますよね。人を育成する経験は、何よりも育成する側を大きく成長させます。育成には計画、観察、指導の仕方、関係性の構築、周囲からの支援を引き出すなどのスキルが求められます。また、相手あっての育成ですから計画通りに進みません。忍耐力も求められます。
権限に頼らず人をリードする経験
管理職になると部門横断型のプロジェクトや、社外の協力会社との仕事機会も増えてきます。そのような状況では、相手があなたのことをよく知りません。権限や肩書きが通用しないわけですから、実力が問われます。また、近年は年上部下を持つことも多いです。部下なので指示命令すれば動いてくれますが、メンバーの力を引き出すには権限以外で人をリードできるか否かが問われます。
頻繁な変化への対応
管理職は中間管理職です。現場では予想外の出来事が頻繁に起こります。大抵は前例がなかったり、複雑に絡み合う人間関係だったり。その場その場で最適解を出すことが求められます。上からも、朝令暮改よろしく方針がコロコロ変わることもあるかと思います。管理職としてはストレスが溜まりますが、成長には役立つ経験でもあります。
変革経験
まさにここ2、3年に多くの管理職が直面している経験だと思います。大前提が覆るわけですから迷いの連続です。寄って立つ基盤がひっくり返ったり、突然なくなったりするから当事者としてはたまりません。しかし、管理職の初期キャリアに変革経験をする人は大きく成長するというデータも出ています。今は、コロナで大変ですが、この経験は明日の成長に繋がると考えています。
重大な意思決定
変革経験と合わせて成長に寄与するのは、重大な意思決定です。新たなビジネスモデルを構築する、逆に事業からの撤退を決める等の正解がない経験も、管理職を能力的にも精神的にも大きく成長することが判明しています。
まとめ
管理職を成長させる経験として五つご紹介しました。特に「変化経験」や「重大な意思決定」を管理職に初期キャリアで経験していると成長には大きく影響することが分かっています。しかし、このような経験は自分で望んでもできるものではありません。巡り合わせや運があるのでしょう。そんな場面に出くわした時に、立ち向かえる人が成長できるのだと思います。最後に余談ですが、管理職の成長にあまり影響がない経験もお伝えします。それは業績責任に関する経験です。こんなに高い業績責任を持ちましたは、あまり成長とは関係性がありませんでした。業績を達成するために、変革した、重大な意思決定をしたは関係性が多いにあるのですが。。。