先日、営業部門が商談映像を利用しながら成功事例を共有していました。とても良い試みだと思いました。一方で成功事例の共有の難しさも感じました。今日は成功事例、失敗事例について考えてみたいと思います。
成功事例は共有しづらい
今回は映像を利用していたので、まだノウハウの共有はやりやすかったと思います。映像という共通の絵を観るというのはとても効果的です。しかし、今回のように映像で共有することはレアだと思います。多くはドキュメント、下手すれば口伝ということもあるかもしれません💦 事例の背景やディテールは、本人以外はイメージしにくいものです。その上、美化されたり上方補正も無意識にされてしまいます。鬼籍に入られた、元楽天イーグルスの監督である野村克也さんが、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とボヤいていましたが、これは真理で成功事例は色々な要素が絡みあうので、再現性が難しかったりします。だから成功事例を共有する時は、成功の本質、エッセンスをいかに抽出するかが腕の見せ所です。
経営者に人気の雑誌記事
日経ビジネスの人気記事に「敗軍の将兵を語る」があります。経営者でこの記事を愛読している人が多い印象があります。失敗事例は誰が見ても納得できる理由で説明がほとんどです。組織知を高めるのであれば、失敗事例を検証し共有することが肝要です。同じような失敗を繰り返す職場や会社は要注意です。
分かっちゃいるけど出来ない
失敗事例から学ぶことの有用性は誰もが同意しますが、失敗から学べる組織とそうでない組織に分かれます。失敗事例を共有するには大前提があります。失敗の犯人探しをしない。失敗の要因を人のせいにしない事です。心理的な安全性がなければ、誰も喜んで失敗を開示しようとは思いません。誰も公開処刑のように吊し上げられたくないですよね。
どの失敗事例を取り上げるかも大事
失敗から組織が学ぶには、前述したように心理的安全性が大前提となります。しかし、何でもかんでも犯人探しをしなければいいかと言うとそうでもありません。目的によっては人のせいにした方が良いケースもあります。私がそう考えるようになったのは、サッカー選手の中村俊輔さんの記事がきっかけでした。監督によっての指導方法に関して中村選手の体験談を語っていました。監督の中には、敗戦理由を選手のせいにする人もいる。特定の選手をスケープゴートにして、監督への批判を回避しようとする監督です。やはり、こういう監督は選手からの信頼は得られないようです。ただ時によっては特定の選手が悪かったと断定してもらった方が選手としては切り替えがしやすいとも中村選手は語っています。例えば、あきらかな個人のミスからの失点で負けた場合などです。チームとして狙い通りの戦い方を進めていても、サッカーは相手があるスポーツですし、人間である限りミスも犯します。だから、そのような敗戦の時は、「こいつのミスで負けた。以上!」と監督が言ってくれた方が、選手は気持ちを切り替えやすいし次の試合に臨みやすいと語っていました。その記事を読んで、失敗事例をそのように扱った方が良い場合もあるなと思いました。もちろん、人の生命や健康に関わるビジネスでは万が一にもミスは許されませんが、それ以外の事象であれば、どの失敗事例を共有するかもセンスが問われるように思います。