クマ坊の日記

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【人材育成】風姿花伝に学ぶキャリア論

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前回の記事では、風姿花伝の概要を説明しました。風姿花伝室町時代の能役者である世阿弥によって描かれた世界最古の演劇論であり、芸能の書でもあります。

 

 

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世阿弥のキャリア論

能役者や歌舞伎役者は小さい頃から、芸に関するトレーニングを受けているイメージが私にはあります。世阿弥風姿花伝の中で、芸事の秘伝についてだけではなく、育成についてもかなりのページを割いて記述しています。現代で研究されている熟達論と照らし合わせても、とても理にかなっている事が書かれています。620年前に書かれた本ですが、人の成長はそれほど変わらないのだなと思います。さて、前置きが長くなりました。世阿弥の教えを紹介していきますね。

 

年代ごとの学び方

能の稽古は7歳から始めると良いとしています。そのぐらいの年齢になると、興味があれば勝手に真似するからとのこと。その際、大切なのは細かな指導はしないこと。口うるさく指導したらやる気を失うから。やる気を失って能が嫌いになったら、これ以上上手くなることはありません。また、無理に能の演目を丸々教えたり、才能を買いかぶって大きな舞台に出演させるのも良くないとしています。

 

12歳

基本技術を身につけるトレーニングをさせなさいとしています。所作や発声などです。この時期に素晴らしい演技を見せる子供もいるが、本当の美しさや面白さではないので勘違いしないようにとも諫めています。この時にしか、演じられない「時分の花」に過ぎないので、まだ一生、この道で食べていけるかどうか分からないとしています。確かに子役で成功しても、そこから大成しない役者はいますよね。

 

17歳

声変わりや骨格が変化するので、これまで出来ていた演技が出来なくなること多い。また、それに伴い自信を急速に失っていくとしています。だから、能を一生続けていくかどうかを決める大事な時期だと世阿弥は説きます。もし、能を極めたいのならこの時期に能を諦めないことが最も肝要だとしています。

 

24歳

メキメキと頭角を表す役者が出てきます。しかし、世阿弥はまだこの時期は本当の実力で人気が出たわけでないよと主張します。客は新しいものを求めているので、ベテランの役者に比べて新鮮味があるだけだからです。だから、この時期は人気が出たとしても天狗にならないようにと注意しています。

 

35歳

これぐらいの年齢までに、名声を得ていないと、能の世界で成功するのは難しいと世阿弥は主張します。そしてこの時期は、自分がこれまでやってきた事を振り返ることを進めます。40歳から自分が生きていく芸の方向性が見えてくるとの事です。

 

45歳

この頃は、芸が下手になることはないが体力が落ちてくるので迫力のある演技ができなくなる。だから優秀な脇役と一緒に踊る事で舞台全体の花をカバーしていきましょう。また、自分の年齢に合った役を選んでいくことも重要です。己を知るってことですね。

 

50歳以上

麒麟も老いて駑馬に劣る」と言うように、どんなに優れていても、老いれば演じられる役は自然と減っていくよ。でも、枝も葉も落ちた木になっても、それまで培ってらきた経験や観客からの信頼によって、花は残るんだよ。と伝えています。

 

現代と比べると

620年前と比べて日本人は長生きになっていますが、年齢ごとの学び方は現代にも通じる点があります。ビジネスパーソンも35歳までに一皮剥ける経験をすると大きく成長するとも言われています。異なるのは、現代は単線型のキャリアから複線型になったという事です。リカレント教育が当たり前の時代になりましたからね。

次回ももう少し風姿花伝を見ていきたいと思います。