ゴールデンウィーク休みに入る前に、マーケティング研修の件である企業の担当者と打ち合わせをしている時のお話です。若い担当者から、「SWOT分析をするといい戦略を策定できるんでしょうか?」という素朴な質問を頂きました。今日はSWOT分析についてサクッと解説してみたいと思います。
目次
SWOT分析とは?
外部環境や内部環境を分析するためのフレームワークの1つです。
- 強み(Strength)
- 弱み(Weaknesses)
- 機会(Opportunities)
- 脅威(Threats)
の4つの角度から分析すると、自社の立ち位置が分析できますよというものです。「分析」と名付けられていますが、実際は何一つ分析できません。新しい戦略が生まれるわけでも、素晴らしい意思決定を手助けしてくれるわけではありません。出来るのは「現状の大雑把な整理」だけです。
アンドルーズ先生
現状の大雑把な整理しかできない手法がなんでビジネス界でこんなに広まったのでしょうか?もちろん4軸で分けるというコンセプトが分かりやすかったというのが最大の理由です。もう一つの理由はアンドルーズ先生の功績です。ケネス・アンドルーズ先生はハーバードビジネススクールの看板教授でした。時は第二次世界大戦の直後、1960年代初頭にビジネスポリシーという授業を立ち上げました。どんな授業かというと、経営者の育成を目指したものでした。具体的には企業戦略のプランニングの手法を学ぶ授業でした。生徒に分かり易く伝えるために、アンドルーズ先生は戦略プランニングのステップを詳細化しました。その中の一つが、今回ご紹介したSWOT分析です。アンドルーズ先生のビジネスポリシーの授業は評判を呼び、その授業の手法は世界中に広がりました。MBAプログラムの原型と言っても過言ではありません。これらの経営手法を学んだ生徒がやがてビジネスの世界で活躍することによって、SWOT分析はますます広がりました。
先生の思いは経営は芸術だ!
経営者の卵達が、経営とは具体的にどうやって進めればいいかを理解しやすいように、SWOT分析を授業で紹介しました。しかし、アンドルーズ先生は「経営戦略はアートだ!」と考えられていたそうです。経営はロジカルに考えたら答えが出てくるようなものでないが信条だったそうです。だから、実際の授業でSWOT分析を生徒にさせても、「本当にそれは強みかい?弱みとも考えられないかい?」なんて議論を吹っかけていたそうです。
SWOT分析は議論の入り口に過ぎなかったんでしょうね。同じフレームワークを使えば状況認識を共有化するのが早いし、そこからさらに議論を深めやすいから。でも、時代と共に分かり易いフレームワークだけが使われるようになり本来の趣旨が忘れられてしまう。よくありがちな事です。
とにかく考えてやってみる
SWOT分析に限らず代表的なフレームワークを知っておくことは大切です。前述したように、複数の関係者と議論をする時に早く同じスタートラインに立てるからです。企業で働いていると延々と現状分析について力尽き果ててしまい、肝心のアイデアや対策案まで行きつかないことがありますからね。
現状分析はフレームワーク使ってサクッと整理して、ビジネスパーソンはその先を考えなければなりません。そこに近道はありません。いかに顧客の立場で考えられるか?考えを具現化して、顧客の反応を見て、さらに改良して。という一連のサイクルをいかに早く回すかが重要です。このことをデザイン思考なんて呼ばれています。デザイン思考については、また別の機会に書いてみたいと思います。