クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【人材育成】OJTが機能するために大切な4つのこと

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ビジネスパーソンの育成には3つの手段があります。研修、自己啓発OJTの3つです。OJTはOn The Job Trainingの略で、職場で業務を通して行う教育訓練です。日本企業が昔から得意としていた教育手法でもあります。今日はそのOJtのお話です。

 

 

OJTが機能するために大切な4つのこと

OJTが機能するためには4つのポイントがあります。

  1. 教える内容
  2. 教しえる相手への関心
  3. 教える人の教え方
  4. 時間
  5.  

以下、一つひとつ解説していきます。

 

教える内容

「教える内容」なんて当たり前と思われるかもしれませんが、意外に統一されていないことがあります。A先輩とB先輩では教える内容がバラバラなんていう職場もあります。これは仕事の標準が決まっていないということです。解決方法はマニュアル等を整備することです。またマニュアル自体も1度作ったものを後生大事に使うのではなくて、絶えず改定、改善する仕組みが必要です。どんな仕事でも作業標準というものは最初にあります。しかし、その作業標準と実際の仕事にGAPが生まれ、「こうやったほうが早くできる」「こうやったほうが楽にできる」と現場で働く人が創意工夫した結果、標準が崩れ、仕事が属人的になり、前述したようなA先輩とB先輩で同じ仕事なのに、教える内容が違うという事が発生します。

 

教える相手への関心

次に大切なのは、教える相手つまり部下・後輩に対する関心です。人それぞれ強み弱みも違いますし、仕事の習熟度も違います。考えてみれば当たり前のことですが、当たり前のことが麻痺するのが職場です💦 

教える人>>>>>教わる人、師匠と弟子、みたいな徒弟制度や体育会系に近い感覚が日本企業には多いようにも見えます。その感覚がいきすぎると パワハラにつながるように思います。

 

教える人の教え方

教え方ももちろん大切です。もちろん教えるプロではないので、素晴らしい教える技術を持ち必要はありません。教え方の種類を増やすことを意識するが重要です。野球のピッチャーであれば、ストレートを投げるだけでなくカーブやフォークも投げれるようにすることです。教える相手も自分と同じようにストレート好きならいいですが、ストレート投げ込んでも反応が鈍い人がいます。「俺がこんなに丁寧にど真ん中にストレート投げているのに、なぜお前は打ってこないだ!」と教える側は怒り悩みますが、教わる側が待っていたのはカーブだったなんてこともあります💦 具体的には、「ティーチング」「コーチング」「振り返り」の3つをまずは意識するといいでしょう。

 

時間

働き方改革の現代においては、もっとも悩ましいのは時間です。人が育つには時間がかかるんです。上司と部下が一緒に働く時間。長期雇用の安心感。世代を繰り返す時間。。。長時間労働がいいと思いませんが、上司と部下が働く時間が長かったからこそ学べることもありました。特に仕事への姿勢や仕事観。これらは、すぐに役立つことではありませんが長く役立つことでもあります。すぐ覚えられることはすぐ他の誰かにとってかわられますから。

長期雇用も育成と大きく関連します。仕事に習熟することが自分の収入増、生活の安定に繋がるとイメージできれば仕事を習熟しようとします。企業側でも長く働いてもらって、教えた分は投資回収できなければ仕事を教えさせようというマインドは働きません。

世代を繰り返すことで、教えることが文化になります。繋がっていくことが前提にOJTは成り立っていたりまします。

でも、もうこんなに時間を贅沢に使える時代ではなくなったようにも思えます。時間がない前提で人が成長する仕組みをデザインする時代に突入したのだと私は感じています。

【人材育成】 反転学習が研修効果を高める

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今週は研修の効果測定と、研修転移についてのマニアックな記事を綴っています。今日は研修を設計する際の具体的な方法の一つである反転学習についてご紹介します。 

 

 

反転学習とは

反転学習、見慣れない言葉ですよね。でも企業の人材開発担当者の間では最近メジャーな言葉になってきています。2014年頃からアメリカで注目され始めた学習手法です。その名の通り、学習の中心だった講義の位置づけを反転、ひっくり返し、予習や宿題にするというのが特徴です。 

企業内で反転学習を取り入れる意義は、「自分で学べる知識は先に予習しておいて、みんなが集まった時はみんなが集まらないとできない討議や議論」をすることに集中できます。

近年のビジネスパーソンは必要な知識量やスキルが増加の一途をたどっています。例えば、管理職だけを見ても昔は部下育成とか指導の仕方、心構え程度で済んでいたものが、やれコンプライアンスだ、個人情報だ、ハラスメントの知識、ワンオンワン、事業戦略、会計、マーケティング・・・と書ききれないぐらいです。これらを1日や2日の研修内で消化することは不可能です。かといって研修日数は増やせない。自分の仕事がまわりませんから。そこでいかに研修の教室外で学ぶかと言うことは合理的なのです。

ちなみに、医学の学習ではこの反転学習がよく用いられます。医療技術の発展のスピードは日進月歩ですから。

 

反転学習で研修効果が高まる

前述した通り反転学習は効果がありますが、もうすこし掘り下げて説明するとメリットは4点です。

  1. 事前に情報提供することで、研修へのモチベーション、問題意識が高まります
  2. 事前に勉強することで、研修ではグループ討議などの協調学習に集中できます
  3. 受講者のレベルを合わせることが可能です
  4. テストとセットとすることで、受講者の理解度を把握しながら研修を進めることが可能です

反転学習の課題

いいことづくめのように見える反転学習ですが課題もあります。ビジネスパーソンで勉強が好きな人ばかりじゃありません💦 会社から指示があれば反転学習を社員は実施しますし、いやいや勉強したとしても、反転学習しなりよりは効果もあります。でも、貴重な時間を費やして勉強するなら意欲的に取り組める内容が望ましいです。研修効果が高まると言われても事前課題で本10冊も読んでこいといわれても引きますよね💦「いかに楽しく反転学習を提供できるか」もプロのコンサルタントファームの腕の見せ所でもあります。楽しく勉強できるのが一番です。

【人材育成】効果的な研修を行うために留意すること

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今週は「研修の評価方法」の理論について話してきました。今日は効果的な研修を企画する際に留意することについて書きたいと思います。

 

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受講者・研修・職場の3つに着目する

企業の担当者から受ける質問でがっかりするのは「最近の流行りの研修テーマは何ですか?」というものがあります。もちろんビジネスなのでトレンドらしきものについてはお答えしますが、内心「研修はファッションじゃないし、ファッションでも人それぞれに似合う似合わないあるよな」なんて思ったりします。もちろん聞いてる本人に悪気がないのは重々承知ですが。

企業内で研修を企画する際に重要なことは、研修だけをみないことです。「受講者」「研修内容」「職場の3点に着目しながら設計していくことがポイントです。 

 

受講者ニーズを分析する

受講者ニーズを分析するといっても、大抵は受講者ニーズが何か分からないというケースが大半です。そんな時は外堀から観察していきます。まずは職能要件や人事評価の実績等を見せていただきます。その上で、現場での声を拾うようにします。例えば受講者の上司からの言葉です。「現在、上司から見て部下に対して物足りないと感じることはなんですか?」とか「あなたの職場の課題はなんですか?」なんていう言葉を投げかけていきます。また、その職場でハイパフォーマーと呼ばれる人の職場にお邪魔してインタビュー等させていただくこともあります。どんな仕事も現地・現物が基本です。

研修講師の腕の見せ所は目標にあり

 受講者ニーズが明らかになったら研修内容を設計し、それに最も適した講師を選択していきます。研修テーマに詳しいことは勿論ですが、最も大切なのは教え方です。一言でいうと「研修内容=受講者の仕事」に紐付けられる人です。「=の橋をかけられる人」と言ってもいいかもしれません。難しいのは=の橋をかけられる講師は企業、階層、職種、受講者によって異なります。A社でうまくいったからB社でうまくいくとは限りません。

職場への働きかけが最も重要

最も重要なのが、研修を企画する担当者がどこまで職場に働きかけられるかという点です。企業内で研修を実施する際、受講者に「今日はどんな目的でこの会場に来ましたか?」と質問をすると、「人事に呼ばれたから」「上司から言ってこい」と言われたらという声が圧倒的です💦 つまり研修が始まる前から学び方が受身であることが普通です。受身の状態からモチベーションを高めて、研修ゴールまで導くのは大変です。私が研修担当者にお願いしているのは、受講者の上司からの声がけです。「研修頑張ってこい!」の一言でもいいので声をかけてもらうことをお願いしています。その一言があるだけでも、受講者のモチベーションは全く変わります。

 

【人材育成】研修評価現在の潮流をサクッと解説してみる

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前回は、研修評価に大きな影響を与えたカートパトリック先生の四段階理論について解説しました。シンプルでパワフルな理論のため、研修に携わる人々に大きな影響を与えたました。しかし、それだけ影響力を持つ一方で検証されたことがないという心許ない理論であることをお伝えしました。今日は現在の研修評価にまつわる潮流についてサクッと解説したいと思います。前回に引き続きマニアックな記事ですがお付き合い頂ければ幸いです。

 

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研修評価とROI

1990年代に入ると研修評価はROI(投資対効果)が問われるようになります。企業のグローバル競争が益々激しくなり、株主からの圧力もその背景にありました。「人材開発にお金を投資して、どれでか儲かるんだ?!」という問いに対して、企業の人材開発や研究者は答えなくてはいけなくなりました。しかし残念ながら、研修効果とROIの因果関係を結びつける試みはうまくいきませんでした。あまりにも変数が多すぎて、研修とROIを結びつけるのは無理がありすぎました。

 

4段階モデルの研究が進む 

前回の記事でご紹介したカートパトリック先生が提唱した「研修評価の4段階モデル」はシンプルな分かりやすさと、研修に携わる関係者がなんとなく「そうそう」「あるある」と納得してしまう力強さで瞬く間に普及しました。しかし、その一方で様々な問題を内包したモデルでした。何より何一つ検証されてつくられた理論ではありませんでした。

学者さんは偉いもので、その理論の矛盾に早くから気づき実務的なモデルの提唱が始まったのが2000年代です。そしてその研究は現在進行形で続いています。私の同僚が参加した今年度のATDというアメリカで開催される人材開発のイベントでは、カートパトリック先生の息子さんが新しい研修評価のモデルを講演されていたそうです。歴史は紡がられるということでしょうか。「研修評価の4段階モデル」は矛盾のある理論ですが、カートパトリック先生が主張したからこそ賛否が沸き起こり研究は進みました。どんな分野でも最初の言い出しっぺは逆風にさらされます。でもそんな人々がいたから私たちの世界は少しづつ良くなっていくのだと思います。

 

研修転移という考えかた

研修評価と表裏一体で研究が進んだのが、「研修転移」という考えです。研修転移とは「研修で学んだことを職場・現場で活かし成果をあげること」です。そして研修転移で重要な要素は3つだと考えれています。

  1. 受講者
  2. 研修
  3. 職場

それぞれにどう働きかけていくかが研修転移に繋がります。裏を返せば研修効果を測るためにはこの3点を見なければ、何一つ評価できないということでもあります。

 

【人材育成】 カートパトリックの研修評価の4段階モデルついてザックリ解説してみる

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私の仕事は企業から依頼されて人材育成の仕組みづくりや人材育成そのものを担当することです。わかりやすいのは「研修」です。新人研修や管理者研修なんていうのがイメージしやすいかと思います。企業が人材育成するのは、「企業の戦略を実現するため」です。限られた時間と資金を人材に投資するわけですから当然「研修効果」についても関心が高いです。今日は「研修効果」を語る際に、忘れてはいけないカートパトリックの研修評価の4段階モデルについてザックリ解説してみたいと思います。

 

カートパトリック先生の4段階評価モデル

企業の人材育成の担当者で、研修効果に興味がある担当者は必ず1度は名前を聞いたことがあるのが、カートパトリック先生の「研修評価の4段階評価モデル」です。元々は1959年に「研修プログラムを評価するテクニック」という記事で紹介されました。その後1994年に書籍として出版されました。私が社会人になりたての頃に、日本語訳の本も出版され、当時の上司から読まされたのを覚えています。とにかく厚くて大きい本でした。読むのが苦痛だったのを鮮明に覚えています💦

このモデルは名前の通り、研修評価を4段階で説明しています。

  1. レベル1:反応
  2. レベル2:学習
  3. レベル3:行動
  4. レベル4:成果

以下、内容について詳しく解説します。

 

レベル1:「反応 Reaction」

このレベルの研修評価は受講者の感想です。「研修内容は理解できたか?」「講師の進め方は良かったか?」「教材は適切であったか?』などです。4段階レベルでは一番低い研修効果の測り方になっていますが、実際は一番多く使われている評価測定方法です。研修を実施する企業のほぼ全てが実施します。

レベル2:「学習 Learning」

レベル2は研修で学んだことをどれだけ記憶し、スキルが向上したかを図るものです。一言で申せば「テストをする」です。知識テスト、技能テスト、ロールプレイングをさせるなどの手法をとります。テストまでやる企業は50%程度でしょうか。受講者の主観的な感想を聞くレベル1よりも、学習した成果を測るということでレベル2に設定されています。

レベル3:「行動 Behavior」 

研修で学んだことを、職場でどう役立てているか、実践できているかを測るものです。企業の担当者が「研修効果」という言葉を使うとき、イメージしているのはこのレベル3の「行動がどのように変化したか」です。最も関心が高いレベルですが、レベル3まで測定できている企業は5%程度でしょうか。関心が高いのに、ほとんど測定していないのには理由があります。行動の変容には、研修だけでなく、職場の上司の支援や、職場環境等が影響するからです。

研修で素晴らしい内容を学んだとしても、職場の上司が研修に関して全く関心を示さなければ部下は学んだことをチャレンジしてみようとは思いません。また学んだことをトライできる仕事がなければ実践することもできません。

レベル3は研修外の要素も絡むため、人事としては手を出しづらいです。手を出したとしても測定するには膨大な手間と時間がかかります。そんな理由でここまで測定する企業はぐっと少なくなります。

レベル4:「成果 Results」

研修終了後に研修受講者が行動を変容させた結果、経営にどのようなインパクトを与えたたかを測定します。売上UPとかコストダウンとか品質向上とか離職率の低下とか。日本の企業でレベル4まで研修効果を測定している会社は1%あるかどうかです。成果を出すためには、様々な要素がからみます。測定すること自体が難解です。しかし、研修先進国のアメリカでは30%の企業がこのレベルまで測定しています。日本と違って、職務が明確で職務に沿った研修を実施しているのでまだ測定できるのかなと想像しています。もっとも、どれだけ研修と経営成果の因果関係を説明できているかは怪しい気もしますが。

検証されていない理論

ここまで長々と説明してきましたが、このモデルには致命的な欠陥があります。4段階のステップは何ら検証されいないということです。これは本当かどうかはわかりませんが、カートパトリック先生が世界的な人材育成のイベントで講演した時に即興で思いついたモデルだともいわれています💦 

 

しかしこのモデルは日本中で最もパワフルな理論として研修担当者の間では流通している理論です。4段階というシンプルで分かりやすいのがその理由です。でも前述した通り問題の多い理論ではあるんですよね。若かりし頃、あれだけ苦労して読んだんですけどね。