クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

【マネジメント】理論なんて関係ない!マネジメントは現場で起こっている!

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先週、今週とマネジメント理論の変遷の一部をご紹介してきました。しかし、「そんな理論なんて意味ないよ!」とちゃぶ台返ししたのが、ヘンリー・ミンツバーグ先生です。今日さミンツバーグについて解説していきます。

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マネジメント理論を否定する

マギル大学のヘンリー・ミンツバーグ教授は、1973年、著書「The Nature of Managetial Work」で、これまで語られてきたマネジメント理論を全否定します。ミンツバーグは5人の経営者に密着して観察をします。その特徴は、経営者の活動は多様で断片的、口頭でのコミュニケーションが多く、他部署や社外、経営上層部との接触が多いというものでした。理論で謳われている活動なんて全くしていないと言うのです。

マネジャー10の役割

ミンツバーグ教授は、著書の中でマネジャーの10の役割を示しています。たった5人の経営者を観察してまとめあげたものですが、ミンツバーグ教授は「あらゆるマネジャーの仕事に共通する」と述べています。

  1. フィギュアヘッド
  2. リーダー
  3. リエゾン
  4. モニター
  5. 周知伝達役
  6. スポークスマン
  7. 企業家
  8. 障害処理者
  9. 資源配分者
  10. 交渉者

フィギュアヘッドとは、象徴的な長としての役割です。色々な行事への参加求められますよね。リーダーはメンバーの動機付けや組織の活性化をさします。リエゾンは社外とのネットワーク作りをさします。モニターは組織内外の情報収集を指します。周知伝達役は社内に向けた情報発信になります。スポークスマンは逆に対外的な情報発信のことです。企業家は新しいビジネスを構築していく役割、障害処理者は問題解決、資源配分者はリソースの分配と意思決定、交渉者は文字通りです。長々と書いてきましたが、10の役割を覚える必要はありません。

ミンツバーグ教授が凄かったのは、管理職の実務に目を向けて、理論よりも実践にいかに役立つかという視点の重要性を示した点です。

 

白黒つけられることであれば、管理職は必要ありません。グレーだから困るわけです。理論を抑えつつも、実際のマネジメントの役割から考えた方が、実務的だと私も考えています。

 

【マネジメント】マネジメント・サイクルの産みの親!

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先週、マネジメント理論の変遷を見てきました。その中では、「業務」と「人」の両面から議論がなされていました。ただ、黎明期のマネジメント理論は、組織として未発達な段階であったこともあり、経営者のマネジメントを対象とした内容が多く含まれました。一方、マネジメント・サイクルはその源流となる考え方を辿ると、管理過程論という分野に繋がります。今日はこの管理過程論について解説します。

アンリ・ファヨール

管理過程論は、20世紀初頭にフランスの起業家ファヨールが著者「産業ならびに一般管理」で提唱したことから広まりました。ファヨール自身はスーパービジネスマンでした。25歳で炭鉱技師から主任技師に昇進し、31歳で鉱山部門役員、37歳には鉱山の経営を任せられ、47歳には社長に就任します。リストラや新規事業開発を推進し、倒産寸前だった会社を見事復活させます。その経験をまとめたのが、「産業ならびに一般管理」でした。

企業活動を6つに分類

ファヨールは企業における不可欠な活動を6つに分類します。

  1. 技術活動
  2. 商業活動
  3. 財務活動
  4. 保全活動
  5. 会計活動
  6. 経営活動

今でいうバリューチェーンそのものです。

PDCAの概念も生み出す

さらに彼は企業経営の管理プロセスを示します。

  1. 計画
  2. 組織化
  3. 指令
  4. 調整
  5. 統制

この五つのサイクルを回し続けることが企業を経営・管理することだと主張しました。ファヨールは実務家であったため、この管理過程が経営者だけに当てはまるものではなく、個々の組織の管理者にも当てはまることを見抜いていました。その為、著書の中でも、この管理過程を、他の生産技術や販売技術、会計といった職能と同様に、管理を担う者の専門的な職能として身につけるべきであるとします。

プロ経営者だからこそ、生み出すことかできた知恵でした。またこの人が凄いのは、管理過程だけでなく、人の側面の重要性も謳っていた点です。「規則を守りつつも、思いやりある配慮してこそ企業は統治できる」と述べていました。本当に凄い実務家だったんですね。

 

【マネジメント】マネジメント理論の変遷とモチベーション理論

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今週はマネジメント理論の変遷について語っています。100年前にマネジメントという考え方が誕生しました。科学的管理法という仕事を分析することからスタートしましたが、人間は感情の動物だから機械のようには働いてくれない。そこで、より人の側面を意識すべきだという雰囲気が形成されてきたというお話をしてきました。今日はその後のマネジメント理論についてのお話です。

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モチベーション理論の発展

第二次世界大戦後、産業界は大量生産構造が加速していきます。そんな中、マズローの「欲求五段階説」バーズバーグの「二要因理論」、さらにマグレガーの「X理論、Y理論」といった「人」側面を重視した行動科学分野が発達していきます。これらと併行して、経営資源の中で最も重要と言える「人」の動機付けへの関心が、産業界でも広がっていくことになります。

 

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マズローの欲求五段解説

人間の欲求を5つの階層に分け説明した心理学理論です。

  1. 生理的欲求
  2. 安全欲求
  3. 社会的欲求(集団に所属したり、仲間が欲しい)
  4. 承認欲求(私を認めて)
  5. 自己実現欲求

自己実現欲求は、生理的欲求から承認欲求が満たされていないと実現できないと考えられています。また、自分の価値観に照らし合わせて、自分らしく生きたいという欲求でもあります。承認欲求までとは違い、実現するのが難しい欲求とも言えます。余談ですが、私が新入社員だった20年以上前には、自由と自己責任というキーワードがバズりました。その中で、自己実現欲求を目指すことが大事なんてことが言われました。しかし、自分の価値観が定まっていないと自己実現なんていうのは出来ないわけです。五段解説と言いますが、承認欲求と自己実現欲求の間はだいぶ離れています。それを知ってからは、安易に自己実現というキーワードを私は使わないようにしています。

ハーズバーグの二要因理論

二要因理論とは、人の仕事に対する欲求を、「衛生要因」と「動機づけ要因」の2つの要因に整理しました。「衛生要因」は、仕事における働きやすさを作る環境要因です。具体的には、職場の方針、マネジメント方法、給与、職場の人間関係、職場環境などを指します。これらの衛生要因は、満たされてないと不満になります。一方「動機づけ要因」は仕事における働きがいを作る意欲要因です。仕事の達成感、人事評価、権限委譲、成長実感などが当たります。動機づけ要因は、満たされなくても直ちに不満になることはありませんが、満たされればやる気になる項目です。どちらもバランスよく引き上げることが大切です。

マクレガーのX理論/Y理論

X理論とは「人間は本来仕事が嫌いであり、仕事をさせるには命令・強制が必要である」という考え方です。性悪説的な捉え方です。一方、Y理論は「仕事するのは人間の本性であり、自分が設定した目標に対し積極的に行動する」という考え方です。こちらは性善説的な捉え方です。

 

人のモチベーションへの関心は高まりますが、人の側面だけ押さえておけばマネジメントはOKという単純な話でもありません。この後も、「人の側面」と「仕事の側面」の2軸踏まえた理論と実践が、試行錯誤しながら現代にも続いていきます。

【マネジメント】ホーソン工場の実験

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前回はテイラーの登場でマネジメント黎明期が幕を開けたことをお伝えしました。発案者のテイラーとの想いとは裏腹に、「科学的管理法は人間性の軽視だ!」と批判を受けます。今回はテイラー後のマネジメント理論について考えます。

 

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ホーソン工場の実験

科学的管理法への批判が高まった反動で、「人」の側面への関心が高まります。そんな中行われたのがウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場での実験です。この工場は給料も高く、福利厚生も充実しており、労働条件は良好でした。しかし、工場の中には理由の分からない不満が燻っていたので、外部のコンサルタントに依頼し、作業能率を向上させるための実験でした。

最初に行われたのは、照明実験と呼ばれ、電灯の明るさと作業能率との関係を調べるものでしたら、結果は、照明を明るくした時の作業能率は高まりましたが、逆に照明を暗くしても作業能率は高まりました。科学的管理法とは全く異なる結果が出てコンサルタントは困り果てます。

エースのエルトン・メイヨー投入!

そこで白羽の矢が立ったのが、ハーバード・ビジネス・スクールに招聘されたばかりのメイヨーでした。メイヨーは選抜された6名の女工さんたちに対して、様々な労働条件を試してみました。結果は、不利な労働環境もものともせず高い生産性を上げ続けました。何てこのような結果になったかを調べてみると、大勢の中から選抜されたということで、やる気とプライドがみなぎり、6名の連帯感も強かったためだと分かりました。まさに精神力の賜物!

続いてメイヨーは、従業員に対する大規模な面接調査を行いました。対象者数は2万人。最初は研究者が面接を行なっていましたが、人手が足りないため、現場マネジャーも面接するようになります。マネジャーは研究者ではないので、難しい質問はできません。そこで、面接方法も自由に変更しました。もはや実験というより雑談です。2万人の雑談メモを渡されて、メイヨーも途方に暮れます。しかし、なんと面接しただけで、職場の生産性があがるという現象が起きます。調べてみると、従業員は話すだけで、リフレクションが出来ることで勝手に不満が解消されていました。一方マネジャーも、部下たちの状況を把握することで対策を考えるようになります。その結果、職場の生産性が上がったというわけです。

労働意欲は人間関係できまる

これらの実験結果を踏まえて、メイヨーは「人間とは感情の動物であり、外的な条件よりも、社会的承認の欲求を重視したり、感情や態度に配慮したり、職場内の良好な人間関係を構築する方が、生産性に影響する!」と結論づけました。これを機に、「人」への関心が高まり、人間関係論と呼ばれる理論や実践上の提案が次々と生まれるようになります。

 

テイラーもメイヨーも現場を観察、分析することから、マネジメント理論を生み出しました。着眼点がテイラーは仕事の側面で定量的、メイヨーは人の側面で定性的だったに過ぎません。両者とも組織の生産性とそこで働く人々の労働条件をよくしたいと願いは同じだったように私は考えます。

【マネジメント】科学的管理法の誕生

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マネジメント理論はありますが、実はあまり研究が進んでいない分野でもあります。その理由の一つがマネジメントの範囲の広さと個別性にあります。業種や職種や会社や個人で、マネジメントでやっている内容がだいぶ違っていたりします。そのため、カチッとした定義が難しいのが実際です。曖昧模糊とし過ぎていて、研究テーマとして難しいのでしょう。今回から数回に渡ってマネジメントの歴史について考えてみたいと思います。

古代から存在するマネジメント

マネジメントは人類の歴史でもあります。文明が誕生し、人が組織を持つようになってから、その組織をいかに効率よく、生産性高く運営するのは永遠の課題でもありました。だから、歴史を通して我々は多くの組織運営について学ぶことができます。科学や文明が発達しても、人間の本質は変わらないのだなとも思います。

フレデリック・テイラーの登場

古代から組織運営については研究されてきましたが、マネジメントという考え方が誕生したのは1900年代に入ってからです。フレデリック・テイラーが提唱した「科学的管理法」が最初となります。科学的管理法は仕事の動作を要素分けし、無駄を排除した上で、標準作業や標準時間を確立し、その「標準」によって管理統制を図るものです。有名なのはべレム・スチール社におけるショベル作業の研究です。

ショベル作業の研究

その職場では、毎日400〜600人の労働者がショベルを使って鉱石をすくっては運ぶ仕事をしていました。日によってすくうものの大きさも形も様々な鉱石なのに、労働者は好きな形、大きさのショベルを選んで仕事をしていました。そんな作業のやり方だから、作業量は労働者によってバラバラでした。そこでテイラーはストップウォッチ片手に作業を分析し始めました。ショベル一杯ですくう最適な分量はどれぐらいなのか?使うショベルの形状は?鉱石をすくう最適な動作は?作業に必要な時間は?労働者の賃金体系もある作業量を超えたら賃金があがる設計に変更しました。きっちりかっちり分析して作業に落とし込みました。ただ、600人を管理しようとしたら現場監督だけでは対応できません。そのため作業計画を立てる専門部署も立ち上げました。結果さ作業量は3.7倍に!コストも新設の部署のコストを含めても従来の半分に!当時の経営者はこぞってテイラーの「科学的管理法」を導入します。

テイラーの意思に反した経営者の暴走

テイラー自体は、作業を標準化することで経営も生産性があがり、それによって労働者の労働条件の改善、賃金も向上する世界を理想としていました。しかし、資本主義の黎明期。経営者も私利私欲を優先していた時代です。テイラーの科学的管理法をひたすら労働生産性向上の道具だけに使い、労働者を酷使しました。当然、労働者も反発し、「科学的管理法」の導入に反対するようになります。そんな経緯もあったので、「科学的管理法」は合理性を追求するあまり、人間性が軽視されているという批判も受けるようになります。

ちなみに、この科学的管理法を土台にして、大量生産の仕組みを発展させたのが、ヘンリーフォードになります。冒頭の写真はT型フォードの生産現場です。