経営に正解はありません。成功している企業の真似をしても一時は成果をあげることはできても長続きはしないケースが圧倒的です。以前、紹介したマーケティングの大御所のポーター先生は「経営は立地」だといい放ちました。しかし、実際のビジネスでは業界でのポジションがいい会社でも経営不振に陥ります。そんな悩める経営者に、90年代に圧倒的に支持された経営理論があります。それがコア・コンピタンス経営です。現在でもある一定程度、支持されている考え方です。今日はそんな経営理論をザックリ考えてみたいと思います。
コア・コンピタンスとは何か?
コア・コンプタンス、難解な言葉ですよね。まずは実際の例をあげてみましょう。車のHondaはエンジンがコア技術。これを軸に車やバイク、芝刈り機や船外機。今では航空機まで事業を展開しています。無印良品であればデザイン力。生活者の立場にたったデザイン力がコア技術。衣食住のあらゆる商品を販売します。ヤマト運輸であれば卓越したオペレーション能力。小さい荷物一つから決められた時間に配達できることが彼らの強みです。どれも共通点がありそうでなさそうですよね。💦
コカ・コンピタンスは技術でも販売網でも人材でも構いません。その企業の力(Capability)が以下の3つの条件を揃えていればOKです。
- 競争相手に真似されにくい
- 顧客が認める価値を創出できる
- 他事業への展開力がある
この理論を考えたのは、ロンドンビジネススクールのゲイリー・ハメル先生とミシガン大学のブラハラード先生でした。その書名は、「コア・コンピタンス経営」でした。私が就職した頃は、ものすごく流行っていたのを鮮明に覚えています。
- 作者: ゲイリーハメル,Gary Hamel,C.K.プラハラード,C.K. Prahalad,一條和生
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞社
- 発売日: 1995/03
- メディア: 単行本
- クリック: 14回
- この商品を含むブログ (2件) を見る
なんでそんなに流行ったのか?
一言で申せば、「既存の事業を大切にしながら、未来につながるようにみえたから」なんだと思います。この理論では、ポジショニングなんて関係ない!まずは自分の得意分野が大切。そして、その得意分野で将来も飯が食えるかどうかを検討することが大切だと唱えました。自分の企業の生業を否定せず、未来志向に見えたのが経営者には魅力的に映ったように私にはみえます。
コア・コンピタンス経営の代表例は「味の素」
1997年にハーバードビジネススクールの秀才たちが、味の素のケーススタディを研究しました。当時の味の素は「アミノ酸」をコア技術に、調味料以外の分野への多角化を進めていました。ハーバードの秀才たちは、この味の素の経営をこき下ろしました。「絶対失敗するから辞めるべきだ!選択と集中した経営を志向すべき」というのが理由でした。しかし、今や味の素の経営判断が成功だったのは明らかです。今ではコア・コンピタンス経営の成功事例として取り上げられています。ハーバードの秀才が何故、誤った判断を下したのでしょうか? 当時は、コア・コンピタンスというのが雲をつかむような存在でイメージできなかったのだと思います。得体のしれないものに、経営資源をつぎ込むのは理解できないということだったと思います。
経営は結果責任が問われます。だからこそ数字で語ることが求められます。でも経営で大切な要素は、数字だけではなく目に見えないものをどう扱うかによるように見えます。