クマ坊の日記

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【book】交渉術

 

今日は年末に読んだ本のお話です。佐藤優さんの「交渉術」著者の外務省勤務時代の特に北方領土交渉でどんなやり取りがあったのかを垣間見ることができます。内側から見た政治家の人物像や官僚とその組織の内在理論は興味深かったです。以下、印象に残った部分を自身の感想を添えて記載します。

広義の交渉術には三つのカテゴリーがある

  1. 交渉しないための交渉術
  2. 暴力で相手を押さえつける交渉 
  3. 取引による交渉術

まず交渉をしないための交渉術とは、交渉を行ってもこちら側が損をすることが明白な場合は、そもそも交渉の土俵には上がってはならない。次に暴力で相手を押さえつける交渉術。大前提は交渉相手との間に圧倒的な力の差が存在していること。最後に取引による交渉術。交渉に絶対勝利することができる確実な技法を身につけるということは、そもそも不可能。

交渉術を3つの類型で考えた事は私自身はありませんでした。交渉術というと、取引による交渉術もしくは交渉しないための交渉術しかイメージできていませんでした。ロシアがウクライナに対して行なっているのは、暴力で相手を押さえつけようとする交渉です。両国の間に圧倒的な差が存在していなかった事。欧米諸国がここまでウクライナを支援するとは想像出来なかったのですか

 

本当の取引とは、取引と言うことを相手に悟らせず行うもの

この言葉は、交渉の本質を的確にいい現しているように思いました。狭義の交渉術はあり、私もそなような研修を担当したりします。ただその時に受講者に強調するのは、交渉のスキルなど使わないのが最強の交渉スキルとお伝えしています。信頼関係があれば、交渉などいらないわけですが。

著者はもっと冷徹に、情報提供者との関係を下記のように解説しています

 

情報提供者との理想的関係とはどのようなものか?こちら側と相手が友人であるという表現を維持する。しかし、実際には6対4くらいでこちらが優位にあるという関係である。なぜ友人であると言う表現が重要かというと、相手がカネで雇われているという認識を持つと「報酬の範囲内で協力すれば良い」という態度になり、情報提供における積極性が失われるからだ。友人ということになれば、積極的にこちら側の意図を忖度して、相手が情報収集に従事する。人間の認識は非対称的である。6対4の関係を維持するためには、8対2くらいの比率になったところではじめて6対4くらいの関係であると認識する

交渉に絶対はありませんが、人間の心理について観察研究することの重要性についてこの本は教えてくれます。

個人的には、人間の心理を俯瞰して見つつも、信頼した人に対しては思い切って懐に飛び込めるかいなかが大事だと思います。その時は損得とかではなく、誠実に相手に向き合うことがポイントだと思います。誰もが自分にベクトルを向けてしまうのが普通なので、誠実に向き合って相手の懐に飛び込む時いうのは、言うは易し行うは難しなんだと思います。