私の生業は企業の人材育成支援です。イメージしやすいのは、新入社員研修や管理職研修です。今日は研修運営の技について考えてみます。
突然の指名が嫌だった学生時代
遠い昔、私が学生時代の頃、授業中に先生から突然指名されて答えさせられるのが苦手でした。分からない問題だったり、時には睡魔に襲われている時の指名は特に嫌だったのを覚えています。今、研修講師として人前で教える時、講師が突然指名したくなる気持ちは理解できます。主な理由は下記でしょうか。
- 誰かに答えてもらいたいけど、手が挙がらない
- 説明を理解しているか確認したい
- 知識、経験が豊富な受講者の発言を促したい
- 眠気をさましたい
突然の指名がよくない理由
第一は、参加者のストレスです。指名された方は勿論、指名されなかった参加者も次は自分が指名されるのではないかとドキドキします。内容に集中して欲しいのに、余計なストレスを与えるのは賢明ではありません。
第二に、ネガティブな感情と結びつく記憶は忘れやすいです。勉強に限らず記憶に残っているのは楽しい記憶ではありませんか?ネガティブな記憶は忘れるように、人の脳はできています。突然の指名は、ストレスを与え、ネガティブな感情を伴うので脳科学的にも進められません。
第三に指名された人以外と対話が生まれませを。講師と質問された2人で対話が完結してしまいます。重要なポイントだから問いかけたのに、その事を確認できるのが指名された人だけだともったいないですよね。
第四に受講者の主体性を引き出せない点です。理想は参加者全員が参画できるような場にすることです。講師からの突然の指名は主体性と真逆の行為ですし、ストレスを与えることで余計受講者は萎縮してしまいます。
どうすればいいか?
- 隣の人と確認させる
- 全員に質問し、全員がその場で書き留めた後に答え合わせをする
- チーム内で確認してもらう
- 発表の仕方を決めて、事前にアナウンスする
- 発言してもらいたい人に、事前に承諾を得ておく
いきなり質問するのではなくて、個人やペアやグループで一回考えさせる場を持つのが大原則です。その上で全体の前で発表させたいのであれば、発表の機会がある事を事前に参加者に伝えておかねばなりません。また、参加者の中に是非発言して欲しい人がいれば、事前に承諾を得ておいた方が親切です。
講師は限られた時間内に情報提供したり、受講者の理解度を高めることが求められます。そのため、自分がコントロールしやすい、突然指名して質問を行いたくなります。しかし、受講者の立場で考えると、研修効果を考えると、突然指名して質問するというのは避けた方が良い