先日、別の部署で一緒に働いていた後輩と久しぶりに再会しました。その際に、「今年からMBAのロジカルシンキングを学び始めました!」という報告を受けました。仕事と両立して、自腹で学費を払って勉強するわけですから大英断です。「アクションを起こすこと自体が素晴らしいし、学んだこと全てが役立つので、頑張れ!」と応援しました。後輩はやる気に満ち溢れていましたが、不安も抱えていました。「社内にはMBAホルダーはいるが、問題解決が下手な先輩もいるように見えます。そうならない為にはどんな点に気をつけたらいいか?」という相談を受けました。今日はその事について考えてみたいと思います。
スナップショットと現在進行形の違い
MBAでは、様々なケースを通して経営管理技術を学びます。事業戦略、マーケティング、財務、組織などなど。ケースはどれも実際に起こった事象が題材となっています。これらケースを通して経営管理技術の原理原則を学ぶことは意義があります。その一方、留意しなくてはいけないのはケースには限界があるという点です。実際に企業で起こった題材を取材して作成されています。学習ツールとして、題材の一瞬を、客観的な視点からスナップショットのように切り取って作られています。しかし、実際の現場はより混沌としています。問題も時間と共に変化します。同時並行で関係のない問題も次々と発生します。そんな状況に加えて、ビジネスには期限があります。限られた時間、限られたリソースの中で意思決定しなくてはなりません。複雑な事象になればなるほど、当時者や関係者の精神状態も揺れに揺れます。登場人物も扱う問題によって複雑化します。それらが現在進行形で繰り広げられるわけだから難しいのは当たり前です。
問題解決は科学とアート
実際のビジネスは、有象無象の問題の塊であり、現在進行形で変化します。だから、事業戦略、マーケティング、財務、組織、人、固有技術とあらゆる分野に対して知識、スキル、経験が求められます。科学とアート、左脳と右脳を両方使わないと解決などできません。結局、実践を重ねる他、問題解決力は向上しません。しかも、その経験自体が問題解決の足枷になることも時にはあるわけで悩ましいことこの上なしです。
越境を通して学ぶ
このように、MBAで学んだことがビジネスですぐに役立つことはありません。寧ろ変に覚えたフレームワークを使おうとして大失敗することもあります。大塚家具の前経営者とかその典型ですね。しかし、だからと言ってMBAを学ぶことに意味がない訳ではありません。基礎知識を理解しておけば、検討する際の時間はショートにカットできます。既存の優れたフレームワークや知識をストックしておく事は有効です。また、内容よりも友に学ぶ人と議論を重ねたり、ネットワークを構築できることは貴重な経験であり財産です。職場や会社を越境する事でしか獲得できない学は確実に存在します。