先日、お客様と研修の打ち合わせをしていた時の話です。話題は社員、特に若手の主体性についてでした。しかし、微妙に話が噛み合いませんでした。よくよく聞いているとお客様が期待しているのは自主性でした。この2つの言葉は一見似ているようで、その意味することは異なります。今日はビジネスパーソンに求められる自主性と主体性について考えてみたいと思います。
自主性と主体性は似て非なる
辞書で調べてみると「自主性」とは、他人からの干渉や保護を受けず、独立して行う性質や態度と説明されています。一方、「主体性」は自分の意志、判断によって自ら責任を持って行動する態度や性質。ますます迷宮の森に踏み入ってしまったような💦
我が家で、夕飯前後に娘が繰り広げる光景で説明してみると、夕飯前に親から言われる前に宿題を解き始めるのが自主性です。一方、夕飯前に「ママが夕飯作るなら、私はデザートを今日は作ってみる」というのが主体性です。自主性は、やるべき事があって、その事を他者から言われる前に自からアクションを取る事です。この例だと、やるべき事は宿題です。私や妻から「宿題やった?」と言われる前に行動できたら自主的だと判断されます。一方、主体性とは自らの意志、判断がポイントです。そこには、自からの「目的」が内在されます。娘の夢はパティシエです。そのために、腕前を試作して誰かに食べてもらう機会は彼女にとって重要です。
周囲から期待されている事を自から行うのか、目的自体も自分で決めてしまうのか。自主性と主体性の大きな違いです。
前に踏み出す力?
ただでさえ混乱をきたす「自主性」と「主体性」ですが、さらに火に油を注ぐのが、経済産業省がとりまとめた、社会人基礎力なるものです。これは、人生100年時代を迎えるにあたって企業、組織、社会で働き続けるに求められる社会人としての基礎力だそうです。前に踏み出す力、考え抜く力、チームで働く力を柱として、12の能力要素として説明されています。提言自体は全うなのですが、よく内容を理解しないで、感覚的に捉えている人事担当者も少なくありません。「前に踏み出す力」って如何様にも解釈できますから。如何様に解釈してもらっていいのですが、我が社が期待する「前に踏み出す力」については語れるようであって欲しいです。
自主性から主体性
従来は企業では、主体性より自主性が求められてきました。上司が期待する行動を忖度して行動できる社員が評価されました。しかし、それも終身雇用や働き続ければ給料も上がるという前提が成立しての話です。もうそんなの幻想ですね。いくら忖度しても、ぞんざいな扱いを受ける50代の先輩達を見れば明らかです。個人が長期間働き続けるには、主体性がある人の方が生き残る確率は高いように見えます。
主体性を尊重する組織風土か
悩ましいのは、これからの時代は主体性が求められると言っても、現実には、自主性を求められる職場が多いということです。企業側も社員に主体性を求めるのであれば、マネジメントの仕方をかなり変える覚悟が必要です。経営者の器が試されますね。