事業戦略には正解はありません。百戦百勝の戦略があれば経営者は喜んでお金を払うでしょう。私の務めるコンサルティング会社ももっと儲かっているはずです。残念ながら魔法の杖のような戦略はないのですが、セオリーみたいなものはあります。多くの失敗事例を観察、検証することから生まれてきました。今日は限界事業の代表的な戦略について考えてみたいと思います。
限界事業とは何か
まずそもそも限界事業とは何かという疑問があるかと思います。限界事業とは、市場のシェアが低すぎるため利益が少なく、事業が不安定な状態のものをさします。日本のマーケットは多くの場合、成熟市場です。成熟した市場では、そのパイを巡って各社が血みどろの競争を繰り広げます。一般にシェアの高い企業は伸びるか維持ができますが、シェアの低い企業は負け続け、利益を創出できなくなります。よく考えている経営者は、差別化を図りニッチに活路を見出しますが、そういう経営者ばかりでありません。特にサラリーマン経営者は思い切った意思決定ができないので、「売上を上げろ!コストは減らせ!」の大号令しか出せません。当然、号令をかけるだけでは経営は1ミリもよくなりません。思い切った経営判断が必要です。
とりうる戦略は3つ
思い切った経営判断といいましたが、限界事業のとりうる戦略は大抵3つに分かれます。
自力拡大はかなりの力技です。利益が減少する中で、あえて集中的に連続的に投資を続けることでシェアを回復するというものです。開発投資をしたり、販売網を急激に拡大させたりなんかが取られます。当然、投資をするに値する強い優位性を持っていることが前提となります。またその過程において大きな赤字を生みやすいですから、それに耐えうる財務力を備えることも必要です。通常であれば、まさかそんな手は打たないだろうという戦略です。まあ、働いている社員からすれば不安でしょうがないでしょうが💦。
よく模索されるのは、他社との提携・合併です。M&Aをする企業は多いですよね。提携・合併で大切なのは相手選びです。できれば自社と異なる優位性を持っている企業と一緒になることがベストですがなかなか思い通りにはいきません。また経営幹部同士が相手を信頼できているかも重要です。結局、食うか食われるかの縄張り争いに終始してしまうケースも少なくありません。数字上は提携・合併することで問題は解決するように見えますが、うまくいくには「提携・合併することでどれだけ事業が飛躍できるか」という問いに明確な回答を経営者が持っているか否かです。
最後はニッチ戦略です。ニッチ戦略には戦場を限定することで、新たに設定した市場で優位性を獲得しようとする戦略です。ニッチ戦略は3つの方向性があります。まず第一に地域を特化する戦略です。第二に顧客を特化する戦略です。第三が技術を特化する戦略です。もっともニッチ戦略を取るにしても、他社との競争に勝つだけのユニークな差別化が発揮できるというのが前提です。