前回、マーケティング戦略の策定について解説しました。今回はマーケティング戦略を実現するためのマーケティングミックスの中の商品開発についてポイントを解説します。
目次
新商品開発は難しい
どんな会社も持続的な成長を目指して、日夜、新商品の開発に邁進しています。企業は多くの時間と資金と人を投下しているので、ヒット商品を開発してガッチリ儲けたいと考えます。でも、なかなか思惑通りにヒット商品が生まれないのは皆さんもご存知の通りです。
新商品開発は3ルート
新商品開発には3つの要素が必要です。大抵どれか一つは揃っているのですが、残りの2つを揃えるのが難しい。顧客の好みは移ろいやすいし、マーケットには当然ライバルもいます。3つの要素とは下記になります。
ニーズ
顧客のニーズは分かっているから、それを満たす新商品開発をしたい。でも、それを実現するためのシーズもないし、ニーズを解決するためのアイデアはないんだよね。
シーズ
我が社にはこんな技術があるから、この技術を生かして新商品を開発したい。でも、この技術を欲している顧客っているのだろうか?シーズをニーズと結びつけるにはどんなアイデアが必要なんだろう?
アイデア
こんな面白いアイデアがあるんだけど、このアイデアを生かして新商品開発をしたい。スティーブ・ジョブズが率いていた時代のAppleがこのタイプです。誰も見たことのないアイデアはあるけど、シーズとニーズがあるかは分からない。
日本企業の多くは、ニーズルートかシーズルートでの新商品開発がほとんどです。最も難易度が高いのはアイデアルートです。誰も見たことがないものから、新商品を開発しようと考えるわけですから。周囲からは根拠がないと総スカンで潰されてしまいます。周りからは変人扱いされるでしょうね。もっとも戦後成長した企業の多くは、このアイデアルートからの商品開発が多かったです。まあ、戦後で何にもない時代だから、新商品=新しい価値と同義であったので、成熟社会の現在とは比べられませんが。
3つの要素を揃えるために多様性が必要
ニーズ、シーズ、アイデアの3つを一人で考えれるスーパーな人もいますが、極めて少数です。多くの人々の力が当然必要です。それも、これからの時代はより多様性が求められます。故に個人ではなくチームとしての開発力が問われます。多くの人々が同じイメージを共有するために、以前記事に書いたマーケティング戦略が必要不可欠です。だからコンセプトづくりが最も重要になります。走る方向が明確なら、メンバーは全力で走れるでしょう。目標が分からないまま、暗闇を走れと言われても困惑するばかりです。
プロセスを明確にしておく
新商品開発の開発プロセスが明確になっていない企業は意外に多いです。プロセスらしきものはあるんですが、極めて属人的であったりりもします。プロセスを明確に決めておかないと、駄目だった原因が個人の責任にフォーカスされてしまいます。すると開発担当者は心情として守りに入るのも仕方ありません。開発の責任を個人ではなく、プロセスに求める仕組みも大切です。人材が豊富な大企業なら代わりの人材はいくらでも補充できますが、中小企業では無理ですから。
撤退ルールを決めておく
新商品をリリースするまでには、多くの稟議と手続きを踏みます。しかし、売れなかった場合の撤退ルールが明確でない企業が結構あります。開発担当者の人員は限られます。すると売れない商品のメンテナンスを抱えながら、新商品開発もしなくてはいけません。現場は大変です。
経営者としても、リソースを投入して開発した手前、撤退の決断はしづらいと思います。撤退ルールを明確に決めておくほうが経営効率の面でも、現場の精神衛生面でもいいと思います。
膨大な時間がかかるのも事実
撤退ルールを決めておく重要性を書いた後で、手のひらを返すようですが新商品が開発されるまでに膨大な時間がかかるのもまた事実です。飛行機の機体の素材に使用されている炭素素材があります。鉄より丈夫でしかも軽い。飛行機の燃費と安全性を同時に実現するためには重要な存在です。東レが開発しました。1961年に研究をスタートとし、商品化できたのは1971年。しかしあまり売れませんでした。ビッグヒットになったのはボーイング社て飛行機の素材として採用されたら2006年です。そこまで我慢できた財務面での企業体力と、炭素素材の可能性に対して先見力があった経営者や開発担当者が人材として揃っていたのが成功の要因です。
言葉で成功要因を述べるのは簡単ですが、多くの人々のドラマが凝縮されているんですよね。これだけ我慢強く商品を育てるのは並大抵のことではありません。
まとめ
商品開発に関して書いてきましたが、やはりそんなに単純なものではないですよね。事業の成功は、天の時、地の利、人の和と昔から言われています。正解がないから悩ましく、また魅力的であるのが新商品開発であり、経営なんですよね。