今日はビジネスパーソンが気になる給料の話です。
目次
私は団塊のジュニア世代です
私は40代です。世代で言うと団塊のジュニア世代です。とにかく同世代の人数が多いです。小中学校のクラス数、8クラスとか9クラスとか平気でありましたからね。日本全国の同学年でくくると200万人ぐらいいます。受験競争も激しかったです。親の世代は24時間働けますか?のバリバリの企業戦士でした。自営業も忙しく働いていた世代だと思います。日本経済も成長し、働いた分だけ収入もあがり、物質的な豊かさを子供時代に享受してきました。漫画は、男性であれば少年ジャンプ世代。ジャンプの王道漫画が沢山生まれ、それらを読んで育ってきました。努力・友情・勝利って奴です。親の働く姿も見てきたので、頑張って努力すれば豊かな、豊かまでいわなくてもソコソコの生活はできるとボンヤリと考えていました。しかし、就職する時にそんな考えは崩れ落ちました。そもそも、就職自体が就職氷河期で大変でした。運良く就職してからも、失われた20年に巻き込まれます。一生懸命働きますが、給料もあがらず、見通しも立たず、将来に不安を感じ、子供時代に体験していた家族を持つことも難しいと感じた世代です。でも、閉塞感から真剣に自分達の生き方を模索し始めた世代でもあります。多様な価値観や生き方が生まれてきました。
40代の給与はなぜ上がらないのか?
企業の人事制度は、業績が右肩上がりに成長することを前提として作られていました。多くの人事制度は職能資格級制度という形をとっています。20代、30代は発揮したパフォーマンスより安い給与で働き、結婚して子供が生まれて物入りになる40代ぐらいから仕事のパフォーマンスより高い給与を払うというものでした。経験を積めば高い成果を上げられようになるはず。だから、若い時は給与が低くて歳とったら給与が高くなるという理屈です。実態は年功主義です。
2000年のITバブル崩壊の時に、多くの企業は人事制度をいじりました。成果主義です。今の40代が20代の後半の頃です。成果主義になって、仕事の仕方は変わらないのに評価だけメリハリがつきました。普通、20代後半の社員に物凄く成果が求められるような仕事は回ってきません。また、当時の経営者や考課する立場の管理職もメリハリのある考課なんかできません。結果、賃金テーブルは抑えられているのに、人事考課の運用は年功的という歪な構造になりました。従来より昇進や昇格、それに伴う昇給が遅れることになりました。人事制度が年功のままだったらもう少し今の40代の平均給与は上がっていたと思います。
さらに追い討ちをかけたのが、再雇用の制度です。本来なら60歳で定年を迎える人たちを再雇用しなくてはいけなくなりました。人事制度は当然そんなこと想定して作られていません。会社の業績が上がらない以上、給与の総原資の配分の仕方を変えるしかありません。失われた20年で若手の給与は抑えられてきました。これ以上は下げられません。ちょっと前は非正規雇用を人件費の原資調整としていました。しかし、今はそんなこと出来ません。何より人手不足の時代です。そこで目をつけたのが40代、50代の社員です。パフォーマンスが良くない人の給与を抑えて、再雇用の原資としました。若い時に頑張って働いたけど40代になっても給与はあがらない。管理職になって責任は重くなるけど給与はそれほど上がらない。一般職で残業した方が給与が高いなんてことになりました。
自社の人事制度をよく見よう
自社の人事制度をよく理解していない人がいます。人事制度を改めてじっくり眺めてみることをお勧めします。評価を獲得するためにはどんな成果をあげればいいのか。どこまで給与が上がるのか試算しましょう。そしたら自分の働き方も変わってきます。給与がこれ以上上がらないとなったら、新たな収入源を増やさなくてはなりません。副業だったり、資産運用だったり。どちらにしても、準備が必要です。
今後の人事制度はどうなるのか
ここからは完全に私の私見です。前述したように日本企業の多くは職能給です。これからは、職能給と職務給のハイブリッド型が増えてくるように考えます。職務給は欧米企業の人事制度で多い形態です。仕事に給与が紐付きます。営業課長の給与は○○円といった感じです。
職能給は経営積めば腕前が上がって、成果もだせるという前提です。実際は歳だけ重ねて成果はさっぱりという人も数多くいます。職能給を維持していくのは限界です。でも、職務給まで振り切るのは怖い。そこで、職能給と職務給のハイブリッド型が増えるという理由です。
実際、私が支援している企業ではそのような人事制度構築を始めました。同じ勤続年数であっても、定型業務が多い職場と非定型業務が多い職場では給与の上限も、昇給の仕方も変えます。管理職になった人の給与は大幅に引き上げます。しかし、管理職を降りたら給与も下がります。転勤も辞さずバリバリ働いて成果出す人には高い給与を払います。一方、安定して仕事したい人にはそのような仕事環境を提供する代わりに給与は抑えます。入社10年ぐらいまでに自分がどのような働き方をしたいかを考え自分でキャリアを選択していくという形です。
最後に
完璧な人事制度なんてありません。人事制度の以前に、どんな経営を志向するのかが重要です。どんな経営を志向するかに正解はありません。哲学の問題です。
どんな経営をしたいかが決まれば、その経営を実現するためにどんな人材にどんな風に働いて欲しいかが決まります。そして人事制度を初めて設計することが可能になります。人事制度は社員がどのようにキャリアを築いていけばいいのかの地図になります。
働く側の立場からすれば、どんな人事制度であっても、自分のキャリアは自分で描くという覚悟がより求められると思います。誰のものでもない一回きりの自分の人生ですから。キャリアを描いても思い通りになることは少ないでしょう。なんたって人生は不思議な縁と偶然に彩られますから。でも、自分の人生の主導権は自分で握ったほうが楽しいでしょ。