ごく稀に、研究開発部門の人材育成についてもご相談を受けます。研究開発も基礎研究、応用研究、開発研究とありますが、私が携わったことがあるのは応用研究と開発研究に携わる部門のみです。しかし、基礎研究を含めて世の中には様々な研究している人がこんなにもいるんだと驚きます。
私の仕事の依頼者は企業です。依頼の背景は、我が社の研究開発部門は商品開発に繋がるアウトプットが出てこない。出てきても業績につながらないなどの理由から相談を頂きます。多くは人事担当役員から依頼を受けて話を聞くという感じです。私は研究については門外漢です。当然、素晴らしい研究成果をあげることができる研究開発職の育成方法は分かりません。たまたま支援した例は、マネジメントやコミュニケーションに関わることだったから引き受けました。
研究部門の管理職は普通、研究員から上がってきた人が務めます。本人もできればずっと研究に携わっていたかったという思いが強いです。人に対する関心がそもそも薄かったりします。それと、コミュニケーションも得意でなかったりします。さらに部下の方が専門知識や専門スキルを持っている場合も少なくなく、上司としてはマネジメントしづらいという側面もあります。その結果マネジメントが機能せず、隣の同僚がどんな研究してるか分からない。1人ひとりがタコツボ状態に陥っているケースがあります。そんな状況で経営からは成果を催促されれば、部門の雰囲気も悪くなるし、成果も出づらくなります。
まず手をつけるのは、管理職のマネジメント力。特にコーチング技術をトレーニングします。研究開発という仕事は、すぐに成果に結びつくものでもありません。何か答えを教えられるものでもありません。研究開発部門の管理職が出来ることは方向性を示すこと。日常場面では部下の話を聞いてあげて、方向づけや支援をすることぐらいです。その際に、コーチングというスキルを身につけておくと管理職はだいぶ助けられます。コーチングを身につけるには、管理職自身が素晴らしいコーチングを体感すること。後は場数しかありません。スキル的には傾聴力を高めることがコーチングの腕前をあげることに繋がります。
余談ですが、この傾聴力、いわゆる聞くスキルはトレーニングすると格段に上がります。聞くなんて普段、無意識にしていることなのでトレーニングしようなんて考えません。だから意識してトレーニングするだけで効果抜群です。簡単なトレーニング方法としては既婚者であればパートナーの話を毎日30分聞くのがいいです。フィードバックも鋭いですし。「適当に相槌うってるでしょう!」とすぐツッコミが入りますから。
研究部門の管理職なコーチングスキルを鍛えるだけで、そこで働くメンバーは仕事がしやすくなると思います。しかし、これだけでは冒頭の役員のボヤキである商品開発につながる研究の答えにはなりません。答えも処方箋も持ち合わせていません。しかし、支援を通して感じたことはプロデューサー的な役割ができる人材が圧倒的に少ないということです。シーズとマーケットを繋ぎ商品開発に仕立てあげれる人材です。ここは悩ましいところで、一過性の教育でどうこうできる問題でもありません。ジョブローテションも含めてプランニングしていかないといけないでしょうね。