クマ坊の日記

人材育成とビジネスとサッカーが中心のブログです

ユニクロから経営者の育成を考える

 

一勝九敗 (新潮文庫)

一勝九敗 (新潮文庫)

 

今更ながら、ユニクロ社長の柳井さんの一勝九敗を読みました。この本が書かれたのは10年前。その後の結果も分かるので、事実と対比しながら読み進めると面白いですね。

 

柳井さんがどのように、経営者として成長してきたのか、ユニクロがどのような過程を経て成長してきたのかがよくわかります。経営者ははたして育成できるのか?経営になるまでどんな経験が必要なのか?どんな人が優秀な経営者として大成するのか?そんなことに私は興味がありました。

 

読んだ感想では、経営者は育成できると改めて感じました。育成の鍵は、経営のポジションでの濃密な経験。経営の仕事は当然、答えがありません。最終的には自分で判断し、意思決定をしなくてはいけません。規模は小さくてもいいので、若い時期に経営を経験しないと、習得はできないでしょう。柳井さんは本の中で経営者はスポーツ選手のようなものと話していました。例えがわかりやすいですね。サッカー選手もフィールドに入ったら、環境を瞬時に判断してアクションを起こさないといけません。ゴールを奪い、勝利を手にするために。これも机上では理解できるけど、実際にできるかどうかは実践してナンボですものね。

どんな人が優秀な経営者として大成するか?これはまだ私の中ではモヤモヤしています。金儲けを超えて、社会によりよく貢献したい、社会を良い方向に変えたいというのは素養としてとても重要だと思います。でも柳井さんも商売を始めた頃は、そんなこと考えていたようには思えませんでした。最初は無我夢中で商売をしていく中で、そんな思いが芽生えてきたように感じました。

 

柳井さんが経営者として一番すごいと思う資質は、自分を客観視できる力ではないでしょうか。自分の強み弱み。会社の強み弱みを俯瞰してみれる力が秀逸なように感じました。成功すればするほど俯瞰するのは難しい。自分の判断は正しいはずと疑わない人が多いと思います。だって成功の源は自分への自信だし、それはアイデンティティのコアを形成する。この本のタイトル通り、経営は一勝九敗、失敗するのが当たり前という考えが身についているんですね。だから早くやって、失敗したらすぐ撤退する。この撤退するという判断ができるのが凄い。若いときに失敗したら臆病になってチャレンジできなようにも感じます。会社が小さいときは、失敗=倒産というリスクも多いでしょうし。そう考えると、経営者に成長するには運が良いというのも重要な資質かもしれません。会社が大きくなっても、撤退を判断するのは難しい。前述した強固なアイデンティティが形成されていることから、自己否定するような判断は当事者としてはしづらいと思うんですよね。

 

一方そんな名経営者の柳井さんでも、一番苦労しているのは人。自分の後継者を育てきれていないんですよね。この本を書いた当時は、現ローソン経営者の玉塚さんを自分の後任社長に据えましたが結果は4年で更迭。65歳には引退したいと書いていましたが、もう64歳ですしね。経営者にとって人のリソースだけは一番思い通りにいかないリソースなんでしょうね。