クマ坊の日記

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【人材育成】20代の成長実感をどう確保するか

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ワークエンゲージメントや働き甲斐とキーワードがここ近年、人事の世界ではバズワードになっています。企業に勤めている方は、会社でエンゲージメントサーベイなどを受けた方もいるかもしれません。今日は若手のエンゲージメントと密接な関連があるとされる成長実感について考えていきます。

離職率30%の20代

20代の社員ね離職率は、ここ10年間30%で前後で推移しています。TVコを見てても転職に関わる会社のCMがひと昔前に比べて増えましたよね。もう転職するのが当たり前の時代です。新入社員と話をしていても、セカンドキャリアという言葉が普通に出てくるようになりました。入社した会社の次をすでに見据えている訳です。日本企業の人事制度の多くは、若い時は賃金を抑え、40代、50代でパフォーマンスより高い賃金を支払うような設計になっています。昔は若い頃、賃金が安くても頑張っていればいつかは上がるという暗黙の了解がありました。実際、多くがそのような結果を手に入れていました。でも、もう企業自体が存続しているか分かりませんし、リストラを迫られる先輩社員を目の当たりににすると、転職を考えるのも健全な思考のように見えます。一方、企業側は若手時代に教育投資をしているので、戦力として活躍する前に辞められるのは回避したいところです。何より労働生産人口が減っている訳ですから、事業を維持するためだけでも人手が必要です。人材採用とその引き留めは死活問題でもあります。

 

成長実感とエンゲージメント

では、どんな施策が20代の若手のリテンションに効果があるでしょうか?そこで、着目されているのが成長実感です。成長実感が高い若手社員は、会社へのエンゲージメントが高く、その結果、離職率も低くなるという結果が数多く報告されています。この成長実感とは「出来なかったことが出来るようになる」「新しい仕事を任される」などです。この成長実感を確保するために重要なのは、管理職のマネジメント力です。若手それぞれの価値観や習熟度は異なります。一人ひとりの違いを把握しながら、きめ細かい育成や指導が求められるからです。

 

個人任せとは違う

人事制度をジョブ型に変更し、教育内容も個人で選択し自ら成長できる環境を整備する企業が増えてきています。今までOJTという名の現場任せよりも、一歩進めようとしている印象です。しかし、その一方で人の成長は現場経験の影響が大きいことを考えると、個人任せだけでは心許ないとも感じます。人はひとりでの成長には限界があります。他者の存在とりわけ管理職は大きな役割を担います。ただ、管理職の職務も増える一方です。管理職の職務自体も見直さないと、成長実感を感じる環境は整わないように思います。

 

【人材育成】硬直化した固定観念ほど成長を妨げるものはない

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人材採用の仕事に長く携わっていると、モノの見方、考え方ひとつで人の成長は大きく変わるということです。たったそれだけの事なのですが、これが極めて難しい。今日は固定観念と人材育成の関係について考えてみたいと思います。

変化を恐れる人、楽しめる人

初めての仕事を担当する時、「この仕事、私にできるだろうか?」と不安に思う人と、「是非やってみたい」と意欲的な人がいます。両極端に分かれるのは、それまで培ってきた経験とそこから導きだされた考え方に起因します。生物学的人見たら、不安を感じるほうが正解です。不安を感じるから、用心し、私たちのご先祖はそうやってからこそ生存してきました。しかし、成長という視点からみる見方が180度違ってきます。後者の「是非やってみたい」の方がより成長できる確率は高いです。この人の心の持ちようと成長について研究したのが、認知心理学者のキャロル・ドゥエック教授です。変化を恐れる人は、「努力しても自分は変わらないのではないか」と考えます。一方、変化を楽しめる人は「努力すれば自分はいくらでも変われる」と考えます。前者をfixed mindset、後者をgrowth mindset とドゥエック教授は主張しました。私がこの考えを知った時は衝撃を受けたし希望も感じました。

 



硬直化した固定観念ほど成長を妨げる

一般的に歳を取ればとるほど人は変わらないと考えられています。実際、職場を見渡してみると成長できない、変われないベテラン社員を多く見られます。しかし、少数派ではありますがベテランになっても変化できる人、成長できる人が存在します。

私の亡くなった祖母も88歳から華道を習い初めて賞を受賞していました。祖母は中学までしか卒業しておらず、勉強や習い事は得意ではありませんでした。しかし、そんな祖母は人一倍好奇心が旺盛で明るい人でした。常に人が集まってくるような人でした。今、振り返ってみると祖母はgroth mindsetの持ち主であり、能動的に他者や出来事と関わっていくことを楽しめる人だから、歳をとっても成長できたように思います。生前、祖母が話していたのは「戦争を生き抜けたことに感謝しなくてはいけない。生きている事に感謝して、やりたい事は何でもやってみたらいい。楽しんでいれば、周囲の人が助けてくれる」

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夢中になれるお手伝い

企業の人材育成に関わるようになって心がけていることは、受講者が夢中になれる場を提供することです。構造的に受講者が自然と楽しめるような研修設計するよう意識しています。楽しむことがそのまま成長に繋がるからです。制約条件があるので難しいのですが、参加者が夢中になれる環境をデザインして、受講者同士が何かアウトプットを作ったり、他者と語り合ったりする中で、刺激を受けて発見していくような学びが私の理想です。

 

【人材育成】経験のない若い人の方がいい

 

昨日、テレビ東京のモーニングサテライトで、掃除機メーカーのダイソンの社長のインタビューを見ました。そのインタビューで印象深い言葉がありました。「変化の激しい時代は、若い人を採用したい。若い人は経験がないから柔軟な発想ができる。逆に経験がある人は失敗を恐れるから」話を聞きながら、若い人をそのように捉えるのだなと目から鱗でした。何故なら、私たちが提供している新入社員研修は現場で失敗しない、職場に馴染むことを目的として設計されています。その根底には、働いた経験がないことをハンデキャップとして捉えている考えがあるからです。このブログでも、たびたびアンラーニング(学者棄却)の重要性は唱えていましたが、その対象はすでに働いてるいる人を主な対象としていました。持たない事が武器になる。改めて気づかされました。医者の無養生とは私のことです💦 もっと柔らかい発想しなくてはいけませんね。

ちなみに、ダイソンは英国にエンジニアを育てる大学を設立しています。学生はダイソンでパートタイムで働きながらこの大学で学びます。学費は無料。そして卒業したら、全員がダイソンに就職できます。かつての日本企業のようだなと感じました。日本企業はジョブ型人事など海外をお手本にして現在人事施策を再考していますが、海外の企業はかつて勢いが良かった日本のモノづくり企業が実施して人材育成方法からヒントを得ているのは皮肉だなとも思いました。

【人材育成】人材版伊藤レポート2.0が発表!日本企業は人的資本経営を目指す時代に突入した

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今年の5月13日に経済産業省から1つのレポートが発表されました。それが、今日ご紹介する人材版伊藤レポート2.0です。これは日本企業の人材開発部周りが騒つく内容でした。今日はこのレポートについて考えてみたいと思います。

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人材版伊藤レポート2.0とは

まずは、伊藤レポートについて解説します。一橋大学の伊藤邦雄教授によって発表されたものです。伊藤教授は日本のコーポレートガバナンスの第一人者です。名をあげたのは、2014年に座長を務めたプロジェクトです。プロジェクト名は、経済産業省の「持続的成長への競争力とインセンティブ〜企業と投資家の望ましい関係〜」そこで発表した伊藤レポートが国内外から高く評価されました。このレポートで日本企業は自己資本利益率8%以上目指すべきと主張しました。この数字は企業経営に大きなインパクトを与えました。

お茶の間で伊藤さんが有名になったのは、セブン&アイホールディングスの鈴木前会長を放逐したさいに注目を浴びました。

 

人材版伊藤レポートが生まれた背景と人的資本経営

賢明な読書の皆さんであれば、コーポレートガバナンスの大家が何で人材について言及するの?と疑問に思われると思います。今年の3月に記事にしましたが、無形資産が企業価値を測るにおいて重視される時代になったためです。企業価値の90%が今や無形資産と考えられています。その中でも人材が企業価値を生み出す源泉になります。人材をこれまでは経営資源として捉えるのが普通でしたが、これからは資本として捉え直すことが経営者には求められます。これを人的資本経営と呼びます。

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社員の管理の考え方が変わる

日本企業は昔から人を大切にしてきました。今更、何を言っているのだ?と考えている経営者もいるかもしれません。しかし、日本企業は本当に人に優しかったのでしょうか?企業と個人の関係はこれまで滅私奉公の形でした。企業として勝ち方が明確な時は、この滅私奉公型の関係は機能していました。しかし、正解がない現代では社員の知恵を結集して新たな価値創造が求められます。企業と社員の関係もよりイコールパートナーに近い関係に変容していくと思われます。それに伴い社員も塊(階層や年次)での管理から個別管理が求められる時代に変わります。

 

人材育成と経営の融合

企業の人材育成の目的は、人材育成を通して経営に資することです。しかし、実態は経営と人材育成は分離して運用されているのが当たり前でした。人材育成は聖域扱いでもありました。しかし、これからは企業業績や価値創造に対してどんな影響があったのかをステークホルダーに説明できることが求められます。企業経営と人事施策の融合です。また、それらは一過性のものではなく持続可能性も求められます。そのためには、企業文化として根付いているかも問われるでしょう。人事責任者でこんな運用が行える人材はまだ限られます。人材マネジメントは数段高いレベルが求められる時代に突入しました。

 

 

【人材育成】山本五十六の名言の二行目、三行目

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人材育成の世界で昔からよく引き合いに出される山本五十六の名言があります。「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」

山本五十六第二次世界大戦連合艦隊司令長官です。彼はアメリカのハーバード大学にも留学し、多様な文化に触れる中で、人間の在り方について深く考えていたと言われます。山本五十六の前述したフレーズは30年前の企業の人材育成担当者の間ではよく取り上げられたものです。しかし、このフレーズに続く二行目、三行目を知っている人は驚くほど少なかったりします。

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている姿を感謝で見守って、信頼せぬば、人は実らず。」

人の育成は長期で捉える考え方が伺えますし、誠実に相手に向き合う重要性を説いています。近年、心理的安全性が叫ばれていますが先人達は当たり前に理解しているわけです。この言葉を思い出すと、人の本質、育成の本質は変わらないのだと感じます。

素敵な言葉ですが、今どきの部下には伝わりません。山本五十六からして分からないですから。例示や比喩を引用する難しさでもあります💦 それでも人材育成に携わる人には知っておいてもらいたい言葉です。