クマ坊の日記

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企業不祥事と経営者の役割

神戸製鋼、ちょっと前でいえば東芝など、日本を代表する企業で考えられないような不祥事が続いている。企業不祥事についてちょっと考えてみた。

 

目次

 

ガバナンスなんて役に立たない

リーマンショック後、取締役会の役割が変化したのを知っていますか?東証が上場している企業に出しているガイドラインがあります。今までの取締役会の役割は、社長を補佐するものでした。しかしリーマンショック後、社長を補佐するのはもちろん、経営を監視する役割を担ってくださいよと案内しています。ガイドラインなんでなんの法的拘束力も持ちませんが。ただ、役員が社長に意見は言えないでしょう。不祥事を起こす企業の経営者は、自分に意見するような部下をそもそも役員にしませんしね。

社内がだめなら社外から優秀な人を引っ張ってくればいい。そんな理由でもないですが、コーポレートガバナンスを確保するために複数の社外取締役を選任してくださいなんてことも東証は推進しています。しかし、神戸製鋼東芝にもちゃんと社外取締役いたけど、監視役にはなりませんでした。社外の人間なんだから、社内でどんなことが起きているなんてわかりません。結局、企業統治で大切なのは仕組みじゃなくて、誰を経営者に選ぶのか?という1点に尽きると私は思います。

  

チェスター・バーナード

近代組織論の創始者にチェスター・バーナード先生がいます。バーナードは経営者でした。時は1920年代。世界恐慌で企業が倒産する激動の時代に、AT&Tの子会社で抜群の経営手腕を発揮していました。そして社長在任中に書かれたのが「経営者の役割」という名著です。この本で一番有名なのは、企業は単なる組織ではなくチームにならなければダメだと説きました。そして組織づくりの3条件として、「共通の目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3つの要素が大切だと説きました。

 

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しかし、今回注目するのは組織の3条件ではなく。同じ「経営者の役割」の第17章に書かれている管理責任の性質の箇所です。バーナード先生はこう言っています。リーダーシップの質が組織の存続を左右するのであり、そのリーダーシップの側面としてこんな風に書かれています。

それは行動の質を決定するものであり、人がどんなことをしないか、すなわちどんなことを差し控えるかという事実から、最もよく推察されるものであり、尊敬と崇拝をあつめるものである。われわれが普通に「責任」という言葉に含めるリーダーシップであり、人の行動に信頼性と決断力を与え、目的に先見性と理想性を与える性質である

 

 ちょっと外国語訳なので文章がわかりづらいですが、大切なのは赤字の部分です。経営者になる人って頭がいいとか、技術があるとか、儲ける商才があるのが大切なんて一言もいっていないんです。「法律を犯していないからOKだ!」とか「儲かるからいいんじゃない!」とか「みんなもやっているから全然問題ないでしょう!」とかではなく、

「たとえ儲かるからといっても、うちの会社はそんなことはしない!、法律違反でなくてもそんな仕事の仕方は我が社はしない!私の目の黒いうちは絶対に許さない」といった良識が大切だと言っています。経営者の責任のある態度、姿勢が社員の尊敬と崇拝を集め、それが社員一人ひとりの卓越した仕事につながるのだと語っています。

 

1920年代の古典ですよ、第二次世界対戦していたときの経営者の言葉です。今の時代にも通用する話です。

 

バーナード経営者の役割 (有斐閣新書 D 35)

バーナード経営者の役割 (有斐閣新書 D 35)

 

良識がある人を社長に選べるかどうか

結論的には「良識のある人を社長に選べはいい」という話なのですが、それが選べなかったのが東芝であり、神戸製鋼だったのだと思います。あれだけの大企業、人材も豊富なのに、良識のある人を選べない悲しさ。

当然、企業内では成果を出した人が出世していきます。経営者に従順な人が出世していきます。でも損か得か、成果をあげたかどうか、自分を裏切らない奴かどうかで選んだ結果がこの末路です。

良識がある人を選ぶのは難しいです。長い期間をかけて人物を評価するしかないでしょう。そして切羽詰まった時に、どんな行動をとるかをよくよく見ていなくてはいけないと思います。追い込まれた時にこそ、その人物の本質がでると私は考えます。

 

 

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